【東大不合格体験記】勝ちに不思議の勝ちあり,負けに不思議の負けなし
【東大不合格体験記】勝ちに不思議の勝ちあり,負けに不思議の負けなし
「なんで,私が東大に!?」
某予備校のポスターを目にするたびに,苦々しい気持ちになります。
なぜなら,私は東大に落ちたからです。
「現役では不合格だけど,浪人して合格!」みたいなサクセスストーリーでなく,最終的に東大不合格。
一浪して東大に落ち,東北大に落ち,慶応大に落ち,第4志望の同志社大へ進学。
完全なるアンサクセスストーリーです。
半分負け惜しみですが,世の中に東大合格体験記は掃いて捨てるほどあります(笑)。
一方,東大不合格体験記は,あまりありません。
なぜなら,「こうやったら失敗した!」という話など,誰も興味がないからです。
しかし,イタリアの政治思想家・外交官であるマキャベリは,こういいます。
「天国へ行く最も有効な方法は,地獄へ行く道を熟知すること」
つまり,失敗する方法がわかれば,成功する確率は格段に上がると。
私と同じような失敗はしないでほしい。
私と同じような後悔はしないでほしい。
光の見えない地獄の底でもがき苦しむ思いをした東大不合格体験が,少しでも役に立てたり,ささやかな支えになれたら幸いです。
【目次】
【東大不合格体験記〜誤算に次ぐ誤算〜】
話は東大受験前までさかのぼります。
少し自慢ぽい話になりますが,ちゃんと東大不合格につながるので,我慢して少々おつきあいください(笑)
中学時代は校内トップで,公開模試で県1位(500点満点中490点)。
県下最難関の高校へ進学し,トップクラスの成績を維持。
全国模試で英語と国語が県1位,偏差値は驚異の87。
高3の成績評価は4.6(5.0満点)。
担任に,「どこを受けても受かるから,いらないよな?」と,早稲田大(法)の学校推薦を辞退。
そして,「おまえが落ちたら誰が受かるんだ!」と教師陣にいわれ,自信たっぷりに東北大(法)だけ受けて撃沈。
あれ?(笑)
浪人して河合塾予備校(東北大クラス)へ入り,東北大模試で全国トップ20位。
勧められて東大・京大クラスの特別対策問題を解いたら,クラストップ。
「絶対もっと上を狙える!」と予備校チューターの言葉に従い,夏から東大・京大クラスへ変更。
直前の東大模試はB判定,センター試験は800点満点中680点(得点率85%)。
「東大は二次試験が勝負!十分,戦える!」「前期・東大を落ちても,後期・東北大は確実!」との助言を受けて突き進み,前述の結果となりました。
あれあれ?(笑)
【東大不合格体験記〜浪人時代〜】
浪人の1年間ほど,必死で勉強したことはありません。
現役で落ちた悔しさから,不合格が確定した直後(3月中旬)から猛勉強を開始。
1年を通して,最低限の6時間睡眠はキープしましたが,それ以外の時間はテレビもゲームも一切やらず,大好きな読書も封印して,毎日12時間は勉強しました。
東大受験当日は,最高の精神状態。
試験開始の合図とともに,周りの受験生がカリカリと解き始める中,問題の最後まで冷静に目を通し,「解くべき問題」と「捨てる問題」の見通しを立てる。
顔を上げて教室全体を眺め,「みんな必死こいてやってるな」と落ち着き払っていると,ふと試験監督官と目が合いました。
「落ち着いてるじゃないか!」といった雰囲気でニヤリとされ,私も「ボチボチですわ!」とニヤリとしてから,猛然と解き始めたことは忘れられません。
自己採点は,英語と国語は8割。
数学と社会(日本史,地理)は6〜7割。
全教科平均で7割程度が合格圏といわれていたので,「これはいける!」と新幹線に乗り,合格発表を東大まで見に行きました。
【東大不合格体験記〜東大不合格〜】
しかし,無念の結果。
何度,目をこすって見ても,掲示板に自分の受験番号はない。
まさに悪夢。
たまたま,同じ予備校のクラスメイトを見かけ,彼は合格の喜びを全身にあふれさせながら,人混みを爆走していました。
彼と私は同じ高校の出身で,同じくらいの成績。
そうか。
彼は受かり,自分は落ちたのか。
その衝撃,愕然,呆然,嫉妬,羨望,失意,挫折,悲嘆,落胆,絶望の感情たるや,筆舌に尽くしがたいものがありました。
プライドはズタズタ。
さらに,「親や予備校など,応援してくれた人たちの思いに応えられなかった!」「期待を裏切った!!」という感情が怒涛のように押し寄せてきました。
こんなことがあるのだろうか?
現実を受け入れられない。
誰か,夢だといってくれ!
とりあえず,親に電話で報告したものの,茫然自失。
東京駅まで,どこをどうさまよったのか,4時間ほどかかりました。
帰りの新幹線は周りの目もはばからず,泣きっぱなし。
その後,なんとか気を取り直して後期の東北大学(法)を受験。
自己採点は英語が9割,数学は8割。
センター試験並みに取れましたが,ストンと不合格(通常,合格ラインは7割)。
確信を持って合格発表を見に行ったのに,受験番号がない。
もう,わけがわからない。
母は絶句し,父はショックのあまり体調を崩して寝込んでしまいました。
【東大不合格体験記〜答えの出ない問い〜】
なぜ,東大に合格できなかったのか?
この問いを,人生で何百回,何千回繰り返したかわかりません。
(単純な答えは,「合格点に達しなかったから」なのですが)
具体的に,「どんな勉強をすれば合格できたのか?」「成績下位の友人が受かり,上位の自分が落ちたのはなぜか?」など考えても考えても,答えは出ないのです。
一方,現実は待ってくれません。
国立大の前後期ともに落ちた結果,2浪するか,唯一合格している同志社大へ進学するか?
もはや,完全に燃え尽きていた私は,同志社へ進学することにしました。
ちなみに,同志社を受けたのは,受験慣れするため,地方受験ができるため。
キャンパスが京都にあることさえ,知りませんでした(ごめんなさい……)
同志社の偏差値は65くらいで(早稲田,慶應が70くらい,MARCHが62〜65くらい),関西の私立ではナンバーワン。
「東の慶應&早稲田,西の同志社&立命館」「早慶も考えたけど,東京の一人暮らしは経済的に厳しいから同志社にした」という関西人は珍しくありません。
関西でのネームバリューは抜群!
が,全国の知名度はそれほどでもない。
特に,私の住む東北での知名度はイマイチなんですよね(苦笑)
東京を飛び越えて,東北から関西へ進学・就職する人はほとんどいないし,その逆もほぼいない。
実感として,東北と関西の隔絶は相当大きい。
東北で関西弁をしゃべると,確実に浮きます(笑)
関西で同志社出身というと,「おお!」と受け止められますが,東北の人に話すと「あ〜ラグビーの強いところだっけ?」と微妙な反応がほとんどです。
東大から同大へ。
こっちのタイトルの方がキャッチーですね(笑)
それはさておき,同志社の入学式の晴々とした雰囲気の中,私ほど暗い顔をした新入生はいなかったでしょう。
授業に出て,サークル活動や飲み会に参加し,人並みのキャンパスライフを満喫。
しかし,頭の片隅にある「なぜ?」の思いは,決して消えることはありませんでした。
周囲には,仮面浪人して京大を受け直す友人などもいましたが,もはやそんな根性はありません。
なぜ,東大に合格できなかったのか?
答えの出ない問い,理不尽な思いは,エンドレスにループし続けたのです。
【東大不合格体験記〜負けに不思議の負けなし〜】
社会人になって働いていたある日,「勝ちに不思議の勝ちあり,負けに不思議の負けなし」という言葉に出会いました。
プロ野球の野村克也氏が紹介していた言葉で,元は肥前藩主・松浦清の言葉です。
勝負では,運良く勝つこともある。
しかし,負ける時は必ず自分にその原因がある。
だから,必ず勝つには負けの原因をつぶすしかない。
そうか!
実際,東大合格者の中には「不思議の勝ち」で運よく合格した人もいるでしょう。
しかし,不合格となった人は,「負けに不思議の負けなし」で必ず理由がある。
根拠となる情報を見つけられなかったのですが,「東大入試を2回行ったら,合格者の3分の1が入れ替わる」という話を聞いたことがあります。
つまり,「不思議の勝ち」が33%存在すると。
「一発勝負のルールなのだから,そこで合格点を取れればOK」「まぐれでもギリギリでも合格は合格」「運も実力のうち」という意見もあるでしょう。
そのとおりです。
ただ,この「3分の1ルール(下位33%,中位33%,上位33%)」は,「働きアリの法則」「パレートの法則」と通じるものがあり,多くの組織で見られる鉄則ともいうべき構成比。
俗説の可能性も否定できませんが,「一面の真実」を物語っているのではないかと思われます。
運良く合格した他者をうらやんでも,しかたありません。
運良く自分が勝つことを期待してもいけません。
負けないためには,ひとつひとつ,負けの原因を徹底的につぶすこと。
これしかない!
長年の疑問が解けた瞬間でした。
【東大不合格体験記〜東大不合格の理由〜】
「負けに不思議の負けなし」の視点で,あらためて「東大不合格の理由」を総合的・俯瞰的に考えると3点ほど思い当たります。
1,十分な準備期間の確保
2,仲間との積極的な交流
3,リアルな目標イメージ
これは東大合格に限らず,様々なシーンで通用する普遍的な法則と思います。
十分な準備期間の確保
東北大志望から東大志望に切り替えたのは,浪人の7月下旬。
東北大の受験科目は,英語,国語,数学。
2月の受験まで6ヶ月間で,英語,国語,数学,社会(2科目=私は日本史と地理を選択)の東大対策を行うのは,少々無理がありました。
特に,英語のヒアリング,独特な数学,国語の小論文,社会2科目の論述は,東北大にはなく東大特有のもので苦労しました。
センター試験対策もあり,6ヶ月間,東大対策に専念できるわけではありません。
ただ,「いかに知識を有機的に組み合わせて解くか?」という根本的な思考力を問われる東大の問題は楽しく,成績は順調に伸びていました。
というと聞こえはいいですが,要は時間切れ(苦笑)
おそらく,東大合格しても不思議ではないレベルには達していた。
しかし,合格を確実にするために必要な「安定した実力」「絶対的な勉強量」には達していなかったのだと思います。
東大合格者を多数輩出する中高一貫校は,高校1年までに履修内容を終え,残り2年間は受験勉強に専念するのが通常です。
6ヶ月 vs 2年間。
その差は4倍で,普通に考えて勝てるわけがありません。
ましてや彼らは,小学生の時から塾通いして中学受験を勝ち抜いてきた猛者。
「半年で受かろうなんて,東大ナメてる?」と怒られそうです(笑)
余談ですが,開成高校を首席で卒業後,東大を出て国家公務員になった友人と同僚として働いていたことがあります。
「東大のみならず開成を首席卒業って,どれだけ凄いの!?」と思いましたが,やはり物事の素早い理解力や,抜け漏れのない精緻な分析力はさすが!と感心しました。
万事が,目から鼻に抜けるようにスマートな印象なんですね。
特筆すべきは「段取り力」。
目標から逆算し,中間目標をシミュレーションして早め早めに手を打っていく「段取り力」=「準備力」が最も優れていると感じました。
私はあの6ヶ月間で,あれ以上の勉強量ができたとは思いません。
が,もう少し早く取り組んでいれば!
せめて,4月からスタートを切っていれば,結果はまた違ったかもしれません。
早め早めのスタート,準備期間の確保は大切です!
その意味で,高校の履修ペースは非常に重要です。
東大を目指すなら,東大進学者を多数輩出する進学校のように高校1年か,せめて高校2年までにすべての履修科目を終えている必要があるでしょう。
ちなみに,私の出身校は,なんと高校3年の12月まで教科書を使った普通の授業をしていました。
しかも,受験で使わない科目(たとえば世界史など)も普通に受けさせられていたので,大学受験対策という意味ではひどいもの(苦笑)
このような話をすると,学校側からは以下のような反論があります。
「受験に関係ない科目も,人生の教養として幅広く学ぶべき」
「このようなカリキュラムでも,受かる生徒はちゃんと受かる」
いやいや,待ってください(笑)
進学校の生徒はほとんどが大学進学を目指すわけだし,受験に必要ない科目は,せめて高校2年までに終わらせるべきでしょう。
人生の教養は,大学に入ってからで十分。
そりゃ,めちゃくちゃ優秀な生徒は,どんなカリキュラムでも志望校に合格するでしょうが,大事なことは,大多数の平均的な生徒をいかに合格させるかです。
一応,県内トップの進学校でしたが,地方の公立高校にありがちな風潮なのか,良くも悪くも自由でのんびりしたものでした。
東大合格者は,現役・浪人あわせて年に数人程度。
東大行きたいやつは,自分で勝手にやってくれ!という環境でした(笑)
もし,高校が早期カリキュラムを組んでいないのであれば,授業を積極的にサボるなり,塾や予備校に通うなりしないと,東大対策は絶対間に合いません!
余談ながら,まじめな人ほど陥りがちなワナとして,「テキストとの相性」も大事です。
これは,岩瀬大輔さん(開成高校→東大・法→在学中に司法試験合格→ボストン・コンサルティング・グループ入社→ハーバードビジネススクール留学→ライフネット生命設立)も指摘していたことです。
中学・高校時代から,岩瀬さんは問題集選びを非常に重視。
学校指定のものでも,自分にあわないテキストは使わない。
理由は,感覚にフィットしないものは勉強が捗らないから。
これ,私もよくわかります。
高校の数学の問題集が相性最悪で,中学時代はもっとも得意だった数学が苦手になりました。
問題と解答しか書いてない問題集で,解説は一切なし。
どこをどう間違ったのか,どのように解けばいいのかわからない。
しかも,その解答すら,ときどき間違っているという始末の悪さ(苦笑)
数学教師は,「1問1問,時間をかけて解法を考えることで実力がつく!」と言ってましたが,そんなヒマな高校生はどこにもいません(笑)
さすがに厳しいと思ったのか,途中から解説プリントを作成してくれましたが,わら半紙にコピーした汚い手書きのもので,勉強する気が起きませんでした。
後日談ですが,東北大の医学部生(東京出身)とその話をしました。
すると,「え!関東では『使うと落ちる』と評判の,あの悪名高いテキスト使ってたの?そりゃ苦手になるわ!」と同情され,衝撃を受けました(笑)
たとえ学校指定のテキストでも,あまりにあわなくて勉強が進まない場合は,変更した方がよいでしょう。
すぐれた問題集,自分にフィットする問題集は,必ずあるはずです!
私の場合,予備校(河合塾)の数学の問題集は非常にわかりやすく,それとは別に使った「大学への数学」(東京出版)も大変フィットしました。
仲間との積極的な交流
受験は,自身の実力で突破するものであり,勉強は一人で行うのが大原則。
私は「友人と話している時間がもったいない!」と考え,自分から積極的に話しかけることはなく,ひとり黙々と勉強に打ち込んでいました。
今思うと,まるで修行僧(笑)
しかし,友人との会話で得られる情報やモチベーションは,侮れません。
同じレベルのクラスメイトは,自分とは異なる考え方や勉強法,ノウハウを持っているものであり,それをお互い共有した方が切磋琢磨して,レベルアップできるんですよね。
自分一人で勉強すれば十分。
他者から得られるものなどない!という姿勢は,ある意味で傲慢。
実際,東大に合格した友人も,なんとはなしに話しかけてくれたり,他のクラスメイトとたわいもない話をして,様々な刺激を吸収していたのだと思います。
もちろん,友人との会話にのめり込みすぎるのは,本末転倒。
ですが,一人で孤独に勉強し続けていると,淡々として視野が狭くなりがち。
同じ目標に向かう友人との交流は,ぜひ積極的に持った方がいいと思います!
この教訓は,後に公務員試験に挑戦したときに生かし,大いに効果を実感しました。
リアルなイメージ
よく「東大合格を目標とするのではなく,入学して何をしたいのか,社会人になったら何をしたいのか,目標を立てよう!」といわれます。
しかし,私は「東大に入ったら○○を勉強して,卒業後は○○になりたい!」と将来の大きな目標を持つことは,ハッキリいって無理と思います。
大きな目標を持てるに越したことはありませんが,18歳やそこらの若者が,社会のことをどれだけリアルに知り,イメージできるでしょうか?
そんなことは不可能です。
もちろん,夢や目標を持つことを否定するわけではありません。
たとえば,サッカーの本田圭佑選手や野球の大谷翔平選手など,幼い頃から明確な夢を持ち,夢を実現したのはとても素晴らしいことです。
しかし,99.9%の人は真似できず,真似する必要もないと思います。
なぜなら,現代は社会情勢が数年単位で激しく変化し,目標自体が変化したり,消失したりするためです。
流動的な状況で固定的な目標を持つことはあまり意味がなく,こだわりすぎることはリスクとさえいえるかもしれません。
東大に行きたい理由は,シンプルに「東大に行きたいから」。
本音ベースでは将来の目標など必要なく,「日本で一番難しい大学だから!」「優秀な人材が多くて刺激が得られるから!」「将来の選択肢が広がるから!」で十分。
その上で,文系なのか理系なのか,文系でなんとなく法律に興味があれば文Ⅰ,なんとなく文学に興味があれば文Ⅲ,といった程度でよいと思います。
入学後に興味が変われば,学部変更も可能です。
三田紀房さんの漫画「ドラゴン桜」「ドラゴン桜2」は東大受験生のバイブル。
「一番合格しやすい東大の学部は理Ⅰ」「学部なんかこだわるな!文系,理系もこだわるな!」とわりきっています。
「ドラゴン桜」は,東大生チームの調査・分析に基づいて制作。
東大合格のための「リアルなノウハウ」が詰まっています。
現在,モーニングに連載中の「ドラゴン桜2」には,スマホやYouTube等を活用した最新の勉強法も紹介。
読んだことのない東大志望者には,ぜひオススメです!

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以前,霞が関の中央省庁で働いていた頃,東大卒の友人たちに「東大に入る前,大きな目標を持って勉強していたか?」と聞きまくりました。
彼らが口をそろえていうのは,「建前はともかく,本音はそんなものない!」(笑)
ただし。
身近な高校の先輩が東大進学するのを見たり,オープンキャンパスを見に行ったりして,「東大に合格したら,ああいうふうになるのだ!」とリアルなイメージを持っていたそうです。
つまり,東大進学率の高い学校は,「身近な先輩や友人が,ふつうにたくさん東大へ行っている!」というリアルな環境こそが,最高のサポートなのです。
これ,脳科学的にとても重要。
壮大で漠然とした抽象的な目標よりも,身近でリアルに具体的にイメージできる目標。
脳は,ボーッとした妄想は単なる妄想としてスルーしますが,リアルな妄想は「現実にできるかも!」と良い意味で勘違いして,「現実にしよう!」とやる気が湧いてくるのです。
ところが,私は。
東大合格体験記はいくつか読みましたが,東大進学した人は身近になし。
受験するまで東大へ行ったこともなく,具体的でリアルなイメージが持てていませんでした。
いうなれば,「左脳で考える理性的,静的な志望動機」はありましたが,「右脳で感じる感情的,動的な志望動機」はなかったのです。
もしも。
現役東大生や卒業生の生の声を聞いたり,オープンキャンパスへ行ったりして,東大進学のリアルなイメージが持てていれば……
「自分もこうなるんだ!」とリアルで生々しい思いがあれば,勉強へ駆り立てる強烈なドライブとなり,取組みや結果もまた違ったのではないかと思います。
この教訓も,後に公務員試験挑戦の際に生かし,大いに役立ちました。
【東大不合格体験記〜人生の教訓〜】
上記の「1,十分な準備期間の確保」「2,仲間との積極的な交流」「3,リアルな目標イメージ」は,いうなれば「勝負で負けないためのコツ」。
このほか,「東大不合格のおかげで腹の底から理解できたこと」「幸せに生きるため心がけていること」が3点あります。
1,ルサンチマンにならない
2,公正世界仮説に惑わされない
3,7割で勝負
ルサンチマンにならない
「ルサンチマン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「ルサンチマン」とは,弱者が強者に対して抱く「恨み」「嫉妬心」のこと。
いわゆる「ひがみ」です。
ともすると,挫折体験をした人は,「あの人が悪い」「その制度が悪い」「この組織が悪い」と自分以外のものに責任をなすりつけて非難しがち。
たしかに,自力以外の要素で残念な結果になることは,しばしばあります。
しかし,文句を言っているだけでは,何も変わりません。
本気で制度や組織がおかしいと思うのなら,変えるために行動すべき。
不満を言っているだけでは,現実は何も変わりません。
なにより,自身がみじめで不幸です。
幸い,私は「東大不合格は○○のせいだ!」と他責の思考には向かいませんでした。
自分自身に原因を求めすぎたため苦しかった,というのは正直あります。
失敗の理由を自分以外のせいにするのは,とても楽なんですよね。
ただ,そんなことは意味がないし,前へ進むことができない。
すべてを自分のせいにする必要はありませんが,自分でコントロールできることを放棄して他者のせいにすることは,人生の敗北。
「決して,ルサンチマンになってはいけない!」と胸に刻んでいます。
公正世界仮説に惑わされない
「公正世界仮説」という言葉があります。
「人間の行動に対して公正な結果が返ってくる」という認知バイアスです。
平たくいうと,「良いことをすれば良い結果,悪いことをすれば悪い結果がもたらされる」「因果応報」といってもよいかもしれません。
これ,ウソです。
少なくとも,私はウソだと思います。
「努力は必ず報われる」とか「最後に正義は勝つ」とか,そうあってほしい気持ちはありますが,現実は異なります。
どれだけ努力しても結果が出ない人がいる一方で,運良くさらっと成功する人もいる。
病気や事故で突然亡くなる善人もいれば,天寿をまっとうする悪人もいます。
もっというと,「生まれつき才能,容姿,資産などに恵まれている人」と「恵まれていない人」のちがいは,公正世界仮説でどう説明できるのでしょう?
前世で良い行いをしたから,あるいは悪い行いをしたから?
仮にそうだとして,私たちはどうしようもありません。
この世は理不尽に満ちている。
いや,「理不尽」というのは公正世界仮説に基づく思い込みで,世の中そういうもの。
良し悪しはともかく,この事実を受け入れないと,生きるのが苦しくなります。
「あれだけ努力したのに!合格してもおかしくない実力はあったはずなのに!なぜ東大に合格できなかったんだ!」というのは,公正世界仮説による思い込み。
要は,成功するときは成功するし,失敗するときは失敗する。
勝敗は時の運。
そう理解できてから,だいぶ楽になりました。
この考えは,努力を否定するわけではありません。
ボクシング漫画「はじめの一歩」の鴨川会長の有名なセリフがあります。
「努力した者が全て報われるとは限らん。しかし,成功した者は皆すべからく努力しておる!!」
つまり,成功するためには努力一択。
でも,努力したからといって,必ず成功できるとは限りません。
ある程度は,努力が報われる世の中でないと,社会の安定性が保てません。
努力がまったくムダになる社会では,誰もまっとうに生きようとは思いません(笑)
感覚的に,7割程度は正当な努力が正当に報われる世の中であってほしい。
ただ,私たちは子供の頃から「努力は必ず報われる!」と公正世界仮説を教え込まれ,ある意味で洗脳されてきています。
公正世界仮説の「過度なとらわれ」から抜け出さない限り,容易にルサンチマンとなりかねません。
そして,運良く成功した(ように見える)人を妬み,足を引っ張り,その失敗を喜ぶようになるでしょう。
そんな残念な人にならないよう,公正世界仮説に惑わされない姿勢が大切と思います。
7割で勝負!
東北大から東大へ志望校を切り替えた当初,両親から猛反対を受けました。
私は一歩も引かず,近所に聞こえる凄まじい口論を交わしたため,隣の家から「頭を冷やせ!」とばかりにクラシック音楽を大音量で流されたこともあります(笑)
センター試験後は,それまでの東大模試の結果等を総合的に踏まえ,「東大合格の確率は7割程度。東北大なら9割程度」と見込みました(あくまで感覚的なものです)。
果敢に,確率7割の東大へ挑むべきか?
手堅く,確率9割の東北大にすべきか?
最終的に両親の反対を押し切り,東大へ挑戦。
私と同じく,東北大クラスから東大・京大クラスへ上がったクラスメイトは,東北大へ切り替えました(そして合格)。
成否がわからない勝負で,前へ出るか,後ろへ下がるか?
土壇場の判断に,その人の「根本的な価値観」が出ます。
一概に、「前へ出るのが正解,後ろへ下がるのが不正解」とは思いません。
たとえば,「受験の合否」という観点で見れば,東北大に切り替えて合格した友人の判断は「正解」。
東大,東北大ともに落ちた私の判断は,「不正解」。
しかし,「人生の選択」という観点で見れば,ちがいます。
仮に,私が東北大を受けて合格していたら,「東大を受けていれば合格したかも…」と一生後悔を引きずったことでしょう。
あるいは,東北大を受けて落ちていたら悲惨の極みで,目も当てられません。
戦場から逃げる途中,背中から追い討たれるイメージです(笑)
死ぬときは前のめり。
といったらカッコよすぎですが,「東北大にしておけばよかった」という後悔は1ミリもありません。
受かろうが落ちようが,私にとっては東大挑戦が「正解」だったのです。
私の根本的な価値観は,「挑戦志向」「リスク選好型」。
東北大に切り替えた友人は,「安定志向」「リスク回避型」。
友人にとっては,東北大が「正解」だったのだと思います。
もちろん,どんな人も挑戦志向,安定志向が入り混じっており,その時々で割合や判断は変わるでしょう。
ソフトバンクの孫正義氏いわく,「成功確率が9割では遅い。5割では愚か。7割で勝負」。
この冷静かつ情熱的な姿勢!
さすが,頭髪が薄くなったことを指摘された際に「髪が後退しているのではない!私が前進しているのだ!」と言い返した孫正義さん!(笑)
「人生の姿勢」として共感をおぼえるものであり,当時18歳の私が勝算7割で勝負したことを誇りに思い,これからもその姿勢を貫きたいと思います!
【東大不合格体験記〜まとめ〜】
もし,私が東大に合格していたら,「努力は必ず報われる!」「結果が出ないのは努力が誤っているだけ!あるいは不足しているだけ!」と努力至上主義者になっていたかもしれません(笑)
しかし,勝負事は「勝ちに不思議の勝ちあり,負けに不思議の負けなし」。
東大不合格体験のおかげで,勝ってもおごらず,負けとなる原因を丹念につぶす。
また,敗者の痛みが想像できる,少しはやさしい人間になれた気がします(笑)
今年もおそらく,挫折を味わう東大不合格者が生まれることでしょう。
東大受験に限らず,仕事でもどんなことでも,全力で,本気で,必死で努力した人ほど,挫折感は大きい。
その挫折感は,誰にもわからないかもしれません。
「うんうん,わかるよ!」とかんたんに言う人は,大ウソつき(笑)
自身の胸の内を,他者が完全に理解できることはありえません。
挫折体験は,完全に克服しなくていい。
かくいう私も,このように客観的に書けるまで何年も何十年もかかり,今もって未消化の部分があります。
傷は傷,毒は毒として,ひっそり飼い続けましょう。
深く傷ついた分だけ,他者の痛みに深く共感でき,強く優しくなれるはず。
挫折体験は自身の血となり,肉となり,人生に深みと味わいを与えるはず。
多少の困難にはへこたれない,打たれ強さ,しなやかさが身につきます。
Life goes on.
人生は続いていきます。
そしてもし,自分と同じように暗闇の底で苦しんでいる他者を見かけたら,声をかけ,ともにうずくまり,泣き,励まし,立ち上がっていきましょう!!!
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