「達人伝」感想(第181話・手みやげ)
「達人伝」感想(第181話・手みやげ)
「蒼天航路」の王欣太(キングゴンタ)先生が連載している「達人伝」のあらすじと感想を紹介します。
今回は,「第181話・手みやげ」です!
<劉邦〜漫画アクション2021/8/3発売号「達人伝」より〜>
【目次】
達人伝〜追撃の劉邦〜
秦軍を追撃する劉邦。
ついに,榮陽城へ撤退しようとする秦軍に追いつき,「諦めろ諦めろ!」「おめえらには逃げ場なんかねえんだぜーっ」と指揮を振るいます。
李牧も「まるで総大将…」,廉頗も「邦と言ったか あの若者…」「どえらい将器を持っとるな」とべた褒め。
思いきって劉邦を中央軍に据えた龐煖の読みが,ズバリ的中。
総大将は,こうでなくちゃいけない。
劉邦は気持ちよいくらい豪快で,痛快で,明るくて,「いよっ,さすが大将!」という雰囲気がいいですね。
<秦軍を追撃する劉邦〜漫画アクション2021/8/3発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜春申君vs麃公①〜
秦軍を追撃する楚軍の横から,秦将・麃公が登場。
麃公さんは死んだと思われていましたが,前回,奇跡の生還を果たしたのでした。
麃公が楚軍の先頭を襲おうとすると,楚国宰相・春申君がすかさず迎撃態勢。
そして,「ほれ!」「取りに来い!」「天下随一の首がここにあるぞ!」と麃公を挑発します。
やりますな,春申君。
春申君は,弁舌には自信があっても,武術はからきしのはず。
じつに肝が太い!
そして,挑発に乗ったフリをした麃公は,軍に被害を及ぼさないため楊端和に軍指揮を任せ,「運が良ければ あの首が置きみやげだ!」と単騎で楚軍に突入。
吹き出しのセリフと別に書かれている思考が,じつにおもしろい。
春申君と麃公,歴史に名を残す2人の読み合い,掛け合いが丁々発止の火花を散らし,じつにいいですね。
<麃公を挑発する春申君〜漫画アクション2021/8/3発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜春申君vs麃公②〜
騎馬を降り,楚軍の間を駆け抜けて春申君に襲いかかる麃公。
なるほど,腕におぼえのある麃公といえど,ふつうに突っ込むのは危険。
それで,あえて馬から降りて敵軍の視界から姿を消し,相対する敵の数を絞りこんだのですね。
<秦将・麃公〜漫画アクション2021/8/3発売号「達人伝」より〜>
通常,歩兵vs騎兵は,歩兵が圧倒的に不利。
走る馬を間近で見たことがある人ならわかるでしょうが,人よりずっと質量の大きい馬が勢いをつけて突っ込んでくると,めちゃくちゃ怖い。踏み潰されるのがオチ。
あんなものは,馬防柵や長い戟がないと,とても対抗できません。
常識ではありえない戦法ですが,ありえないがゆえに麃公。
そして,肉薄する麃公に,春申君は「決して取らせはしない!」「我は 戦国四君 最後の一君なるぞ!」と気迫で迎え撃ちます。
いや,この胆力はさすが。
そうなんですよね,戦国四君のうち,孟嘗君はだいぶ前に亡くなっており,続いて平原君,そして信陵君も先の秦との大戦後に亡くなり,春申君は最後の一君。
三君の思いを受け継ぐ自分が,こんなところでくたばるわけにはいかない!という矜持と気炎が,首の皮一枚のところで命を繋ぎます。
<麃公を迎え撃つ春申君〜漫画アクション2021/8/3発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜楚の国辱〜
危機を脱した春申君は,「信陵君の戦いを受け継ぐ者が求める勝利は 最低でも秦国内への侵攻でなければならず」「わが楚の 百世の国辱を雪ぐ報復の戦いも そこから始まる」と宣言します。
楚の国辱とは?
かつて,楚王は秦へ行ったきり幽閉されて殺されたり,秦の王女を娶らされたり,広大な領土を攻め取られたり,何十万人もの人々を殺されたり,その結果遷都まで余儀なくされたり,歴代にわたって屈辱を受け続けています。
有名な詩人である楚の屈原が入水自殺したのも,秦に侵食され続ける楚の将来を悲観してといわれます。
とにかくもう,楚は秦のせいで踏んだり蹴ったり。
さらに,楚人というのは,中華民族の中でも熱く激しい気質を持つ人たちで,「大楚(タアチュウ)!」と叫んで片肌を脱ぐような習慣は,他の地方では見られないそうです。
だから,楚は秦が大嫌い。
文字どおり,恨み骨髄に徹している。
趙も,長平の戦いで20万人の捕虜が生き埋めにされたり,さんざんな目にあって秦に深い恨みを抱いているでしょうが,楚人はもって生まれた性格が激しい。
私見ですが,楚は大阪〜関西に近いイメージ。
大阪人〜関西人は,熱く激しい気質の人が多く,義理人情に富み,東京を敵視しますよね(笑)
私はそんな大阪,関西が好きですが。
春申君はスマートな紳士なので粛々と宣言していますが,楚軍全体の雰囲気は「秦に対する今までの恨み,忘れてへんからな!絶対に許さへんからな!」と,熱い思いが煮えたぎっていたのではないでしょうか?
<秦への侵攻を宣言する春申君〜漫画アクション2021/8/3発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜金5千斤〜
援軍を求める蒙武に対し,「あれほど弱い軍はいっそ皆殺しにでもなればよい」と言い放つ秦王・嬴政(えいせい)。
続いて,「あれは蒙驁の敗戦だ」「責任を問い 軍総帥を罷免する」と,軍のすべてを作り直すため直ちに都へ戻るといいます。
<秦王・嬴政〜漫画アクション2021/8/3発売号「達人伝」より〜>
目下,秦軍で蒙驁ほど優秀な将軍はいなさそうですが,秦王は自信あり。
その根拠のひとつが,異民族の直属軍。
口々に「金5千斤」といいながら,直属軍が帰還してきます。
首1つにつき,金5千斤の報酬がもらえると。
ちょっと待ってください。
1斤=600gとすると,5千斤は3,000kg=3トン!?
現在の金の価格(1g=約7,000円)を適用させると、21億円!
現代中国だと1斤=500gのようですが,にしても17.5億円!
ええーーーっ!?
宝くじどころの金額じゃないですね!!
桁違いすぎて,ちょっと自信ありません。
たぶん,1斤の重量や金の値打ちが違うのでしょうが,とにかく,とんでもない大金ということです(笑)
そりゃ,直属軍のモチベーションは爆上がりでしょう。
余談ですが,ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは,年収約800万円までは収入が増えれば増えるほど,幸福度は比例して大きくなることを科学的に明らかにしました。
ただし,年収800万円付近を境に、それ以上収入が増えても幸福度はほぼ変わらないそうです。
現代人と古代人では金銭に対する感覚,価値観は異なるでしょうが,仮に21億円を得たら,どれほど幸福度が上昇するでしょうか?
<首を持ち帰る秦の直属軍〜漫画アクション2021/8/3発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜盗跖軍団に迫る危機〜
遡ることおよそ3刻(45分前)。
蒙武率いる秦軍を追撃する盗跖軍団に,異変発生。
先頭を切って追撃する魁(かい)兄貴の首が,突然刎ねられます。
首領の盗跖ねえさんにも,一陣の狂風が襲いかかる。
ちょっと待ってください。
金5千斤のページの絵,秦の直属軍が持っている首が入っているとおぼしき血が滴っている布の袋,これって盗跖ねえさんの羽織っている服じゃないですか?
今回の第181話のタイトル「手みやげ」は,麃公さんが春申君の首を手みやげにしようとして失敗した話と思っていましたが,まさか秦直属軍の手みやげが盗跖の首ということ?
いやいやいや,勘弁してください。
せっかく,連合軍全体がいい感じで追撃しているのに,われらが盗跖ねえさんが殺られちゃうのでしょうか?
8代目は秦将・白起に,9代目は秦王・嬴政に殺されました。
10代目の盗跖ねえさんまで秦軍に殺られるのは,切なすぎます……
王欣太先生,なにとぞ命だけは助けていただきますよう,伏してお願い申し上げます。
次回,第182話に乞うご期待です!
<危機が迫る盗跖〜漫画アクション2021/8/3発売号「達人伝」より〜>
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王欣太先生の「蒼天航路」などの絵をリアルで観て購入できる唯一の場所=ギャラリー・クオーレ。
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