「達人伝」感想(第176話・流氓混成軍団)
「達人伝」感想(第176話・流氓混成軍団)
「蒼天航路」の王欣太(キングゴンタ)先生が連載している「達人伝」のあらすじと感想を紹介します!
前回のレビューはこちら。
今回は,「第176話・流氓混成軍団」です!
<漫画アクション2021/4/20発売号「達人伝」より>
【目次】
達人伝〜劉邦の武〜
盗跖(とうせき)と劉邦の混成軍団が,秦軍に突入。
盗跖も劉邦も,「紳士」(公権力側)と対極にある「流氓(りゅうぼう)」。
流氓の彼らが,秦軍総帥・蒙驁(もうごう)率いる正規軍に通用するのか?
劉邦は,「敵陣ど真ん中を ぶち抜こうぜえー」と気炎を上げます。
ヌンチャク状の武器は置き,両手を広げ,両足を踏ん張り,流氓混成軍団を鼓舞することに専念。
これが,劉邦の武!
自ら先頭を切って敵陣に切り込む武もあれば,陣中央で全軍の士気を高める武もある。
盗跖軍に「うおおおおおー」「首領ぁーっ」と呼ばれ,あっという間に心を掴む劉邦。
さらに,「盗賊なんかに 邦を取られてたまるか」と,無双のボディガード・樊噲(はんかい)が奮起。
劉邦を中心に競い合うように襲いかかる劉邦軍と盗跖軍は,手のつけられない勢いが加速します。
<気炎をぶち上げる劉邦〜漫画アクション2021/4/20発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜七人の侍〜
盗跖の部下・魁(かい)と,劉邦の部下・樊噲(はんかい)。
彼ら以外の名前は明らかになっていませんが,盗跖の部下4人と劉邦の部下3人の計7人が,秦中央軍へ怒涛のごとく突っ込みます。
リーダーシップに対して,フォロワーシップという言葉があります。
世の中の全員がリーダーになれるわけではない。
組織は,多数のフォロワーと少数のリーダーで構成されるのが常。
リーダーにばかり光が当たりがちですが,良きリーダーと出会い,彼ら彼女らの力になることを喜びとする良きフォロワーも,幸せな人生ではないでしょうか?
歴史の表舞台に出ない,流氓の7人。
彼らにも「その他の部下」で片付けられない,各々の人生,個性,ドラマがある。
いわば,七人の侍。
彼らの熱き義侠心こそ,時代を揺り動かす存在となることでしょう。
<秦軍に突っ込む流氓の7人〜漫画アクション2021/4/20発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜モチベーションの差〜
話はそれますが,南極点到達を目指して争ったアムンセンとスコットがいます。
最短最速で極点到達を達成したアムンセン隊に対し,遅れて到達して帰路に遭難全滅したスコット隊。
2人の明暗を分けたものはなんだったのか?
独立研究家の山口周さんは,装備や準備の違いもさることながら,根本的な差異として「モチベーション」を挙げます。
アムンセンは,幼い頃から探検家志望。
冬に窓を開け放って寒い環境で寝る練習をしたり,船長の資格を取得したり,高いモチベーションを維持。
探検のためのスポンサー集めに苦労しており,じつは当初は北極点を目指していました。
しかし,出発直前,ロバート・ピアリーが北極点到達のニュースを知ります。
口うるさいスポンサーの影響等が届かない外洋に出てから,アムンセンは「2番目到達に意味はない!我が隊は南極点を目指す!」と宣言。
隊員は,歓喜して受け入れたといいます。
目的地をあっさり地球の反対側へ変更する,切り替えの速さ。
スポンサーを出し抜く,人をくったような大胆さ,ふてぶてしさ。
「歴史に残る探検家になる」というモチベーションがめちゃくちゃ高かったんですね。
そして,探検家としての準備も,長年にわたって積み重ねてきた。
一方のスコットは,エリートの職業軍人。
英国王室の威信をかけ,軍のバックアップを受け,任務に忠実に取り組みました。
が,いかんせん,そのモチベーションや探検家としてのバックグラウンドは,アムンセンには及ばなかったことでしょう。
達人伝〜職業軍人・蒙驁〜
さて,アムンセンのような自発的モチベーションの高い流氓軍団に対し、スコットのような職業軍人の秦軍総帥・蒙驁。
とはいえ,ここは未踏の大地でなく戦場。
戦闘のプロフェッショナルであり,歴戦の将である蒙驁さんに一日の長がある。
蒙驁さんの攻撃がエグい!
動物愛護団体から猛烈なクレームが来そうな勢いで(笑)、流氓軍団の勢いを止めにかかります。
<獅子奮迅の秦軍総帥・蒙驁〜漫画アクション2021/4/20発売号「達人伝」より〜>
このシーンは,「蒼天航路」で孫呉軍の突破を図った関羽を思い出します。
次々と襲いかかる虎に対し、青龍刀の切っ先で目を斬り、脚を斬る。
戦意喪失させることだけを目的に、一切の無駄を排し、最小限の動きに徹する。
まさに,鬼神のような関羽でした。
見事,7人の流氓の勢いを止めることに成功した蒙驁は,先頭の二百騎に掃討するよう命じたところで,「そうはいかないよ」と背後から盗跖に斬りかかられます。
痛恨の蒙驁。
蒙驁が転進したところ,狙いすましたかのように現れた盗跖の嗅覚は、八代目盗跖譲りですね!
<蒙驁に斬りかかる盗跖〜漫画アクション2021/4/20発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜北東の戦場〜
秦の黄壁軍,王翦軍と,廉頗と丹の三侠軍が対峙。
無名(ウーミン)の隙を見て,その剣を奪う王翦。
軍指揮だけでなく見事な武技を見せた王翦ですが,廉頗にあっさり斬撃をかわされます。
まあ,手負いの状態とはいえ,レジェンド廉頗にはそうそう勝てない(笑)
しかし,矢傷のため,一瞬動きが硬直した廉頗。
荘丹が桓齮をいなし,無名が王翦に裏拳をかまし,庖丁が剣を奪い返したため,王翦と桓齮は撤退を指示。
いいとこなしの王翦ですが,このあたりの判断の素早さはさすがですね!
達人伝〜天下の大将軍・孟梁〜
さあ,孟梁さんが大進撃を開始します!(笑)
「歴戦の勇将 孟梁!」
「尚武の国 趙の烈将 孟梁参上!」
「見よ!白馬でなくとも道が開く!」
「天下に馳せる武名とはまさにこういうものだ!」
「趙の雄!炎の烈将 孟梁来来ーーーっ」
無名がいうとおり,聞いている方が恥ずかしくなるセリフの数々です(笑)
しかし,荘丹の見立ては異なります。
「口を衝いて出る言葉は はったりや妄想の類かもしれない」
「だけど あんな武将が他にいたか?」
「大声で自分を褒めながら 秦の陣の中央を先頭を切って駆け抜ける」
「そんな武将が他にいたか」
そして,こう続けます。
「あの頓着のなさは武器になる」
「無名 庖丁!孟梁さんの脇につこう」
荘丹の慧眼はさすが。
孟梁さんは,戦場の最前線で戦っているんですよね。
有言実行。
安全な場所から批判するのではなく,自ら危険な場所に赴いて体を張る。
世の中,悲観してウジウジ行動しないでいるより,楽観してウオリャーッと勢いで突っ込んでみると,意外となんとかなるもの。
孟梁さんは,友達になりたいタイプ。
一緒に酒を飲むと,自慢話がうるさそうですが(笑)
<天下の大将軍・孟梁〜漫画アクション2021/4/20発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜黄壁の迎撃〜
情動の将・孟梁さんに対して,理性の将・黄壁。
「どこだ秦将!」
「剣を交えたいとは思わぬか この趙の名将とーーっ」
孟梁さんが黄壁に気づかずスルーしていく様は,ギャグですね。
黄壁と秦兵のシュールな視線が冷たすぎる(笑)
<黄壁に気づかずスルーする孟梁〜漫画アクション2021/4/20発売号「達人伝」より〜>
孟梁が通り過ぎたところで,冷静に迎撃を指示する黄壁。
いや,猪突猛進タイプの孟梁さんにとって,冷静沈着タイプの黄壁は,相性最悪ではないでしょうか?
まるで隙が見当たらず,まんまと迎撃のワナにハマってしまった孟梁。
丹の三侠が脇を固めるも,切り抜けることができるのでしょうか?
次回,「第177話・本能の促す先」を乞うご期待です!
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