「達人伝」感想(第173話・開戦!!)
「達人伝」感想(第173話・開戦!!)
「蒼天航路」の王欣太(キングゴンタ)先生が連載している「達人伝」のあらすじと感想を紹介します!
今回は、「第173話・開戦!!」です!
<漫画アクション2021/2/16発売号「達人伝」より>
【目次】
達人伝〜麃公の天賦の才〜
前回のあらすじと感想はこちら。
さあ、連合軍と秦が開戦!
扉絵で「連合軍を迎え撃つ秦の武将たち!」とあるように、今回は秦の麃公(ひょうこう)、蒙驁(もうごう)、王翦(おうせん)の3人の武将の視点で描かれます。
まず、麃公さん。
前回までは、荘丹の秘剣・絶界で翻弄されカンカンに怒ったり、項燕に馬ごと斬り上げられて空を飛んだり、あたふたしていましたが(笑)、今回はすっかり落ち着きを取り戻しています。
麃公 vs 項燕 & 李牧。
この立ち回りが、じつにおもしろい!
麃公は、李牧が仕掛ける矢を冷静に打払い,項燕の斬撃を右手の戟で受け止めます。
同時に、左手で剣を抜き、まるで忍者のような握りと振りで項燕に斬りつける。
項燕危うし!と見た李牧は、龐煖の馬の尻を蹴って救助。
その直後、麃公は右手の戟で李牧に斬りつけ、李牧は仰向けになんとかかわしますが、麃公は李牧の馬の尻を蹴り、目論見どおり中央突破に成功。
麃公は、「一度交戦すれば どんな武の際もおのずと見切れる」「それが俺に備わる 天賦の才だ!」と語っています。
たしかに、麃公は項燕、李牧と直前に対戦していますが、学習能力が高すぎでしょう!
右手に鉾、左手に剣、さらに足技まで駆使して、宣言どおり敵中を分断する麃公の武は圧倒的です。
<中央突破する秦将・麃公〜漫画アクション2021/2/16発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜麃公の二刀流〜
麃公、項燕、李牧の大立ち回り、ゴンタ先生はどうやって考えたのでしょう?
馬、武将、剣のフィギュアを用いて、こうして、ああして、こっちから見て、あっちから見てと実際に動かしたりしないと、具体的なイメージは描けないのではないでしょうか?
あと、考えさせられたのが、麃公の二刀流。
右手に戟、左手に剣を操っていますが、戦場では一刀流と二刀流、どちらが実戦向きだったのでしょう?
現代では、剣道やフェンシングに代表されるように、一刀流が主流。
ですが、宮本武蔵の二天一流もあるし、蒼天航路でも呂布や張遼は両手に矛を持ってブンブン振り回していました。
二刀流に習熟するには、利き腕じゃない腕にも、相応の器用さと腕力が求められることでしょう。
野球やボクシング界では、希少なサウスポーは有利ですし、二刀流はそれだけで不慣れな相手に有効だったのかもしれません。
達人伝〜秦軍総帥・蒙驁〜
続いて、蒙驁さんです。
麃公の動物的、直感的な武に対し、蒙驁は観察眼と洞察力を遺憾なく発揮します。
南西から、北東から、怒涛のごとく押し寄せる連合軍。
さらに、戦国最強の武将・廉頗が、目の前の本隊でなく北東方面にいると判明。
蒙驁は、「向かわせた王翦には負担が重すぎる!」「代わって私がそちらに当たるべきか!?」と迷いつつ、王翦と桓齮の武、戦局全体のバランスを考慮し、「いや まずはこの本隊!」と腹を据えます。
攻め急ごうとする蒙武に対しては、「押さえ込んではいない!」「敵の音を聞きなさい」「左右ともに 劣勢の音がしない」と分析。
蒙驁の一連の観察力、判断力、胆力は、美しすぎてセクシーさすら感じます。。。
<冷静かつ豪胆に指揮する秦軍総帥・蒙驁〜漫画アクション2021/2/16発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜劉邦誕生!〜
左右両翼から攻め上がってくる盗跖と劉邦。
おや、劉邦はヌンチャクのような武器を振り回していますね。
劉邦が、個の武を発揮する場面はあまりないような気もしますが、戦場でどのような活躍が描かれるのか、楽しみです!
そして、龐煖に「劉邦」と呼ばれ、「ん?…劉邦!?……おっと 悪かねえ響きじゃねえか!」
邦(バン)あらため、劉邦の誕生です!
<劉邦誕生〜漫画アクション2021/2/16発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜蒙驁の子・蒙武〜
「司令官 龐煖!賊党の類まで自在に操り 常道を越えた戦に仕立てようというのか!」と唸る蒙驁。
さらに、「前軍はこの子ではもたない…」とわが子・蒙武の力量を見切り、本営へ下がるよう命じます。
さて、麃公、王翦、桓齮、楊端和たちは、順調に成長しています。
蒙武はどうなのでしょう?
「キングダム」では、蒙武は巨躯剛腕を誇る豪将として描かれていますが、達人伝の蒙武は、名将・蒙驁に遠く及ばない凡将として終わるのでしょうか?
えてして、2代目は偉大な初代を超えられないジンクスがありますが、修羅場をくぐり抜ける中で成長・覚醒する日が来るのでしょうか?
今のところ、あまり伏線は感じられませんが、個人的には実直に任務に打ち込む蒙武の今後に期待したいところです!
<蒙驁と蒙武〜漫画アクション2021/2/16発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜蒙驁の髪型〜
そういえば、達人伝の登場人物の多くは、頭巾で髪の毛をまとめているケースが多いですが、蒙驁や麃公は頭巾を被っていません。
じつはこの髪型、型にはまらない自由なスタイルの象徴だったりするのでしょうか?
王道中の王道、本命中の本命の人材と思われる蒙驁が、じつはフリースタイル的な考えの持ち主だとしたら、かなり意外!
今まであまり意識していませんでしたが,登場人物の髪型とキャラクターの関係性を観察・考察するのもおもしろいですね!
達人伝〜将軍・王翦〜
さあ、最後は王翦「将軍」です。
当時の「将軍」という称号は、現代のサラリーマン組織でいえば、おそらく「課長」より上の「部長」、あるいはもっと上の「取締役」ぐらいのステイタスでしょうか?
王翦将軍は、判断が速い!
敵軍に廉頗がいるとわかるやいなや、すぐさま本営に援軍を要請し、炎車(えんしゃ)を用意させます。
さらに、部下のモチベーションを上げるのもうまい!
「天下最上の首だが 年寄りだ」「取れば 将軍職の俸給数10年分にも相当する」と、桓齮をあおります。
そりゃ、桓齮も「ぐおおお」「人生一発逆転!やらいでかーーー」と奮い立つでしょう(笑)
同じ野心家でも、楊端和は冷静な性格ですが、桓齮は若気の至りというか、かわいげがありますね。
ごくっと生唾を飲み込み、「いざぁ〜〜〜」と緊張する桓齮に、ニヤリと笑う廉頗が登場。
<廉頗を待ち構える桓齮〜漫画アクション2021/2/16発売号「達人伝」より〜>
「やっぱりやめとく」という桓齮に、「それがいい」と冷静に答える王翦。
なるほど、二人とも天下に名を轟かせる名将・廉頗を見るのは初めてで、桓齮は感性で、王翦は理性で、「かなわない!」と判断したのですね!
<廉頗への攻撃を取りやめる桓齮〜漫画アクション2021/2/16発売号「達人伝」より〜>
しかし、そこはデキる男・王翦。
自軍が廉頗と衝突する可能性を見越し、「炎車」を準備していました。
炎車とは、ワラなどを燃やして激しく火と煙を発しながら、馬に引かせる車のこと。
モウモウとした煙で視界を奪い、敵が停止するその隙に、無数の矢を撃ち込ませる。
天下の豪勇・廉頗に正面からぶつかっては、誰人たりともかなわない。
そこで、煙幕を張って動きを止め、大量の矢を浴びせることで、廉頗の「個の武」の無力化を図ったわけです。
達人伝〜準備の武将・王翦〜
これ、むちゃくちゃ賢い作戦!
このような工夫や知恵をこらす姿勢は、とても大切ですよね。
正面から行って突破できないなら、右から、左から回り込む。
あるいは、ロープやハシゴをかけて上から登ってみる。
それでもダメなら、下から潜ってみる。
蒼天航路で、合肥侵攻をあきらめて撤退する孫権軍を張遼軍が追撃し、燃え盛る船にブタを大量に乗せて突っ込ませ、大混乱に陥れるシーンがありました。
実際、三国志や達人伝の時代に、そのような史実があったのかわかりません。
ただ、牛に火をつけて敵軍に突っ込ませる戦術は古代中国にあったらしいので(火牛の計)、ゴンタ先生は、それを応用したのかもしれません。
ゴンタ先生に戦場の指揮を任せたら、奇想天外なヤバい作戦がいろいろ飛び出しそうですね!(笑)
<炎車を仕掛ける王翦〜漫画アクション2021/2/16発売号「達人伝」より〜>
少々ネタバレになりますが、これより後の時代、秦王より楚の侵攻を打診された王翦は、60万の兵力が必要と答えて侵攻軍から外されます。
しかし、「20万の兵力で十分」と大見得を切って侵攻した秦将・李信は、敗北。
その後、秦王の要請を受けた王翦は、60万の兵力で侵攻して楚を滅亡させます。
王翦は、彼我の戦力を冷静に分析し、具体的にシミュレーションし、周到に準備する武将だったのでしょう。
準備は大切。
事前にどれだけ入念な準備をするかで、結果は戦う前から決まっているものです。
達人伝〜まとめ〜
さあ、最終ページを見ると、廉頗の馬が矢をくらっており、窮地に陥るのか?
廉頗、丹の三侠、龐煖、項燕、李牧、盗跖、劉邦たちは、どのような反撃を見せるのか?
愛すべき天下の大将軍、趙将・孟梁さんは、馬骨たち以上に活躍する機会があるのか!?(笑)
次回,「第174話・天命を繋ぐ」に乞うご期待です!
<無数の矢を受ける廉頗〜漫画アクション2021/2/16発売号「達人伝」より〜>
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