「達人伝」感想(第180話・榮陽の陣)

「達人伝」感想(第180話・榮陽の陣)

蒼天航路」の王欣太(キングゴンタ)先生が連載している「達人伝」のあらすじと感想を紹介します。

今回は,「第180話・榮陽の陣」です! 

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<楚の春申君〜漫画アクション2021/7/6発売号「達人伝」より〜>

【目次】

達人伝〜挑発する廉頗〜  

「んむ?どうした小僧ども 来ないのか?」「あきらめるのか この首を」と挑発する連合軍・廉頗。

 

怒りつつ、撤収を了解している秦将・王翦

黄壁、王翦、桓齮の秦軍は、洛陽方面へ迂回しながら榮陽まで撤収するようです。

 

廉頗と李牧は、荘丹について会話をのんびり交わしています。

噂をすると、ヨロヨロになった荘丹が殿軍まで下がってきました。

 

そう、前回、荘丹は秘剣・絶界で秦軍本営を攻撃し、鮮やかに崩したものの、そこで気を使い果たしたようです。

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「開花したのにもうしぼんだか〜〜」という廉頗のセリフが、ユーモラスでいいですね。

 

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<秦軍を挑発する廉頗〜漫画アクション2021/7/6発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜麃公生還〜  

なんと、秦将・麃公さんが生きていました!よかった!

あれ、麃公さん、鼻血出してます?盗跖ちゃんのセクシーな太モモにやられた?(笑)

 

首をかききられたと思った麃公さんでしたが、マントを留める「留め金」が防いでくれたようです。あと数センチ斬撃がずれていたら、アウト。

 

麃公さん、一回死んで悟ったようです。

 

「この戦が終わったら 秦を出て行くことにした」「秦って国に 俺の居場所はもうない」「そもそも でかい集団の中で 人に従って生きるのは やはり俺には無理だ」

 

ああ、麃公さんは本質的に、組織の中で権力を行使する「紳士」ではなく、自由で気ままに生きていきたい「流氓(りゅうぼう)」なんですね。

 

作者の王欣太先生は、もともと漫画家になりたかったわけではないとのこと。はじめは商社のサラリーマンでしたが、会社が倒産。ふと、漫画賞に応募し、伝説の編集者と出会い……といった流れで漫画を描くことになったそうです。

 

蒼天航路」を連載している時も、「漫画家の次は、あの稼業じゃ!」とコミックのコメントに書かれていたので、基本的に自由人で、流氓度が高いのでしょう。

 

麃公さんのこのセリフは、もしかしたら、欣太先生の思いを一部代弁しているのかもしれませんね。

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<自由に憧れる秦将・麃公〜漫画アクション2021/7/6発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜愚将・蒙武〜  

榮陽に撤退を図る秦将・蒙武。

 

要塞で連合軍を防衛し、撤退するところを追撃、魏国への再侵攻をもくろみますが、「大楚(タアチュウ)!」という数万の軍の喊声にビクッ。

 

楚から侵攻してきた春申君と項燕が合流し、秦軍の榮陽入城を阻止しようとします。

 

「布陣など到底無理!どうすればいいんだーー」

この蒙武くんの顔、もう完全にダメダメな愚将(笑)

 

そこへ、最強のパパ、秦軍総帥・蒙驁が到着。

 

「またしても 戦場で愚息を庇うのか!」「そんな甘っちょろい親心を 虎狼の国がよくぞ許しているな!」という項燕のツッコミは、ごもっとも(笑)

 

しかし蒙驁は、「それは間違いなく 総帥としては致命的欠点であろう!」と認めつつ、生き場を求めて秦へ来たのは親の責任、子の面倒を見るのは当然!と開き直っています。

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<蒙武を助ける蒙驁〜漫画アクション2021/7/6発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜シンドリーム  

そう、蒙驁は斉国から秦国へ流れてきた移民でした。

 

現在にたとえるなら、祖国を捨て、一族でアメリカへ移民してきた親が、子供を助けるのは当たり前。できの悪い子なら、なおのこと助けてやるのが親心ってもんやろがい!と。

 

あらためて、秦という国は、能力があれば成功のチャンスがあるフェアな国。

歴代宰相の范雎や呂不韋なども、他国の出身です。

 

才能があり、機会をつかみ、努力すれば成功できる「アメリカンドリーム」ならぬ「秦夢(シンドリーム)」的なものが、当時あったのかもしれません。

 

周辺諸国から虎狼の国と蔑まれているものの、優秀な人材を集め続ける仕組みがあった。それこそが、秦の強さの源泉だった。

 

礼儀や形式を嫌い、唯才是挙すなわち「ただ才あればこれを挙げよ」と能力主義を推奨した三国志の魏の曹操と、相通じるものがあります。

 

ただ、曹操の場合、結果論ではありますが、優秀な人材を登用し続けた結果、司馬一族が魏国そのものを滅ぼす結果へ繋がりました。

 

秦も、あまりに勝ちすぎた白起は,不遇な最期を迎えた史実があり。

文官はともかく、武官に王の脅威となるほどの力を持たせないようコントロールすること、いわゆるシビリアンコントロールが難しかったことでしょう。

 

これより数十年後の話になりますが,漢帝国の創設に大きな貢献をした名将・韓信も,「狡兎死して走狗烹らる」(兎が捕まれられて死ぬと,犬も食われてしまう。必要な時は重宝がられるが、不要になればあっさり捨てられること)という言葉を残し、処断されています。

 

余談ながら,能力主義という点で日本を見ると,アメリカとは異なり、外国から移り住んだ日本人が活躍したという事例は、あまり聞いたことがありませんね。

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<項燕と対戦する秦軍総帥・蒙驁〜漫画アクション2021/7/6発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜大器・劉邦  

連合軍総司令官・龐煖は、軍の配置を変更。右翼に丹の三侠と盗跖、龐煖。左翼に廉頗、李牧、孟梁。そしてなんと、中央に劉邦を据え、全軍に全速前進を命じます。

 

龐煖は、劉邦のことを「何の問題もない」「あの座りの良さ そして誰より気炎がでかい」といいますが、これはかなり思い切った布陣です。

 

話は脱線しますが、古代ローマの英雄ユリウス・カエサルが、自分の後継者として指名したアウグストゥスは当時18歳。

 

アウグストゥスは、いつも青白い顔をしている虚弱体質。まるで軍才もないどころか、行軍に耐える体力すらない。

しかし、そのような弱点を補って余りある「素質」があると、カエサルは見抜いていた。

 

事実、アウグストゥスは、数々の困難に打ち勝って初代ローマ皇帝となるわけですが(しかも75歳の長寿)、18歳の無名の青年を後継者にしたカエサル(55歳没)の慧眼は恐るべし。

 

通常、王様や首相や社長が20歳に満たない若造に後を託すことはありえないし,世界史上でも、このような世代を超えた見事なバトンタッチの事例はありません。

 

若き日の劉邦にも、様々なエピソードが残っています(後世の創作の可能性もありますが)。劉邦にも、若き日のアウグストゥスのような大器の片鱗が、見る人には見えたことでしょう。

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<気炎を上げる劉邦漫画アクション2021/7/6発売号「達人伝」より〜>

達人伝〜異民族軍団出動〜  

榮陽への入城を図る蒙武は、全軍を入場させるのは無理と判断。洛陽に援軍の要請に向かうため、100騎を従えて離脱します。

 

これを遠目に見ていた盗跖軍団。どうも怪しいということで、盗跖軍団は蒙武を追跡。

 

場面は変わり、洛陽で報告を聞く秦王・嬴政。

「ふんっ 榮陽にさえ停まれぬのか」と、実戦演習として、異民族の直属軍を援軍として送ることを指示。首ひとつに50斤の金を褒賞として与えるよう命じます。

 

金50斤?

1斤は約600gだそうなので、5斤は3000g。仮に、現在の金の価格(1g=約7,000円)を適用させると、2,100万円になります。

 

誠に不謹慎な話ですが、2,000万円少々で殺人を請け負うかといったら、いささか割に合わないように思われますが、それは現代日本の恵まれた人々の感覚。

 

2000年以上前の古代中国で、しかも拉致されてきた異民族がもらえる報酬としては、とんでもなく破格だったことでしょう。

 

そりゃ、モチベーションも爆上がり。

蒙武を追いかけて行った盗跖軍団は、この鼻息の荒い異民族軍団と衝突するのでしょうか?大丈夫か、盗跖!?

 

次回の展開に、乞うご期待です!

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<秦王直属の異民族軍団〜漫画アクション2021/7/6発売号「達人伝」より〜>

 

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