「達人伝」感想(第183話・大なる戦功を求め)
「達人伝」感想(第183話・大なる戦功を求め)
「蒼天航路」の王欣太(キングゴンタ)先生が連載している「達人伝」のあらすじと感想を紹介します。
今回は,「第183話・大なる戦功を求め」です!
<秦軍総帥・蒙驁〜漫画アクション2021/9/21発売号「達人伝」より〜>
【目次】
達人伝〜進撃の連合軍〜
撤退する秦軍と,追撃する連合軍。
全軍で追撃してくるかと思いきや,楚軍が西進することに驚く秦軍総帥・蒙驁(もうごう)。
そう,連合軍は秦軍を撃退するのみならず,秦への侵攻を目論んでいるのでした。
詳しく知りたい方は,前回の記事をどうぞ!
まずは本隊の立て直しを図る蒙驁に迫る趙将・李牧(りぼく)の矢。
しかし,蒙驁は名手・李牧の矢を苦もなくかわします。
負傷しまくっていても,さすが蒙驁さん。
さて,矢の速度はどれくらいなのでしょう?
ざっと調べたところ,和弓やアーチェリーは200km程度なので,古代中国の弓矢も同程度と推測されます。
むかし,車で180km出したことがありますが,フワフワと地に足がつかない感覚が恐ろしく,10秒くらいで80kmに落としました(笑)
また,テニスの高速サーブも200kmくらい。
人類トップレベルの反射神経と運動神経を誇るアスリートが,しばしばノータッチエースを決められるのを見ると,200kmというのはとんでもない速さであることがわかります。
もう李牧が射込んでこないと見切った蒙驁は,全速で麃公についていくよう秦軍へ指示し,自身は単騎で離れます。
追撃する李牧に合流してきた楚将・項燕(こうえん)。
「武人・蒙驁は桁はずれだが 総帥・蒙驁には綻(ほころび)がある!」「それを衝く!」と,項燕は軍を李牧に預けます。
つまり,項燕は蒙驁を追い,李牧は引き続き秦軍本隊を追撃。
さて,蒙驁は何の目的で単騎で離れたのでしょう?
自身が囮(おとり)となって,連合軍の猛追を分散して弱める意図でしょうか?
項燕は項燕で,「総帥・蒙驁の綻を衝く!」と勝算があるようです。
「総帥・蒙驁の綻」といえば,この後も登場しますが,愚息・蒙武のことでしょうか?
<秦軍を追撃する楚将・項燕〜漫画アクション2021/9/21発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜麃公激怒①〜
バラバラに遁走する秦軍を嘆く麃公(ひょうこう)と楊端和(ようたんわ)。
「この腰抜けの秦前軍どもーーっ」「ただちに元の陣列に戻れい!」と麃公はブチ切れます。
ふだん,自由でユルユルな人が怒ったときほど,怖いものはありません(笑)
<烈火の如く怒る秦将・麃公〜漫画アクション2021/9/21発売号「達人伝」より〜>
と,そこに襲いかかる丹の三侠。
庖丁(ほうてい)と荘丹(そうたん)が麃公に,無名(ウーミン)が楊端和に斬りかかりますが,麃公は振り切って本隊合流を優先。
「この戦 おのれの意のために戦うのではない!」「より大なる戦功を求めるだ!」「秦に置いていく仲間たちのために!」
私利,私欲,私怨を捨て去り,仲間のために戦う麃公。
こうなった人間は,強い。
付け入る隙がなく,ときに超人的な力を発揮します。
項燕が危惧していたとおり,戦局を変えうるかもしれません。
<大なる戦功を求める麃公〜漫画アクション2021/9/21発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜麃公激怒②〜
どやしつけて鼓舞するとともに,隊の先頭に数十騎ずつ配置することで,秦軍本隊の立て直しを図る麃公。
「どへたれ共があーー」「その無様な逃げ腰をたたっ斬ってやろうかあーーっ」
「恐るな」「隊列を整えい」「さもなくば 刎(くびは)ねるぞ」
「肝玉を据えろ」「戦から逃れるな」「最強の軍団たる誇りを取り戻せ」
魂の叱咤激励。
ある意味で,負け戦や負けっぷりこそ,将の力量が問われます。
「金ヶ崎崩れ」とも呼ばれる信長の撤退戦ですが,全滅やむなしの困難な殿軍を見事に務めて乗り切ったことで,秀吉はその力量を信長に認められ,信頼を勝ち得ています。
あるいは,三方ヶ原の戦いで完膚なきまで武田信玄に敗れた徳川家康。
恐怖でウンコをもらしながら,わずかな兵とともに命からがら城へ逃げ込みますが,すべての城門を開いて篝火を焚き,武田軍を待ち受けます。
いわゆる,空城の計。
ここで,恐怖に駆られてガチガチに閉じこもろうとしたら,追撃してきた武田軍にあっさり攻め落とされていたかもしれません。
たとえ負けるとしても,再起不能となる敗戦は絶対に避ける。
被害を最小限に抑える。ただでは負けない。
あわよくば,隙を見て逆襲を仕掛ける。
言葉でいうのは簡単ですが,修羅場でオタオタせず腰を据えて対応するのは,本当に困難なもの。
麃公はさすが。ちょっと,顔が怖いですが(笑)
<秦軍を叱咤激励する麃公〜漫画アクション2021/9/21発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜馬鹿息子・蒙武①〜
麃公,最高かよ!と思っていたら,ここに「間の悪い男」が登場します。
秦軍総帥・蒙驁の息子・蒙武。
援軍を要請したが拒否されたと麃公に伝えると,「おまえ 前軍を放り出して そんなもんを請いに行っとったのか!?」
「え?…」と絶句する蒙武に,「邪魔になる!」「一部隊でいいから隅っこで率いてろ 馬鹿息子!」と一喝。
蒙武くん,ハッキリ言われてしまいました(笑)
<蒙武を叱り飛ばす麃公〜漫画アクション2021/9/21発売号「達人伝」より〜>
達人伝〜馬鹿息子・蒙武②〜
麃公に丹の三侠が襲いかかります。
「功にならん雑魚どもめがぁーっ」と麃公。
なるほど,丹の三侠はほぼ無名なので,麃公が討ち取っても武功にならないんですね(笑)
そこへ,王翦と桓齮が合流。
丹の三侠の対応を王翦たちに任せ,本隊の立て直しに向かう麃公。
さあ,王翦・桓齮vs丹の三侠(荘丹・無名・庖丁)です。
と,ここへまた,間の悪い蒙武くんが,よかれと思って割って入ります。
しかし,斬撃はあっさりかわされ,馬で蹴られてしばし宙を飛びます。
「邪魔だ どけーっ」と,一喝する桓齮。
「総帥の息子だぞ」と,たしなめる王翦。
激戦の最中,王翦の冷静な忖度は最高です!
桓齮は「え!?」と驚いているので,蒙武のことを知らなかったんですね〜残念!(笑)
<桓齮をたしなめる王翦〜漫画アクション2021/9/21発売号「達人伝」より〜>
空中を浮遊後,どべっと馬に着地(着馬?)したところで,蒙武の見せ場は終わります。
いや,3枚目というか何というか,味方の足を引っ張りまくる蒙武の存在感は抜群!
どんなにデキが悪かろうと,いや,デキが悪いほど,子供はかわいいもの。
経営の神様のようにいわれている松下幸之助は,はじめ世襲を否定していたものの,晩年はどうやって自分の子供に後を継がせようか,親心丸出しで腐心したそうです。
弱点があれば,組織としてカバーしようと動かざるをえないもの。
蒙武の存在は,今後もキーパーソンとして見逃せません!
達人伝〜5人馬交錯〜
蒙武はさておき,王翦・桓齮と荘丹・無名・庖丁の5人が交戦。
李牧の矢が王翦に迫り,秦軍vs連合軍戦はいよいよ白熱。
5人馬が交錯するこの絵,凄いですね!
<王翦,桓齮と交戦する丹の三侠〜漫画アクション2021/9/21発売号「達人伝」より〜>
「戦局を完全に掌握するため 本陣に帰することを命じます!」と李牧が丹の三侠に命じるところで,第183話は終わります。
状況を整理すると,秦軍本隊は函谷関を目指して撤退しつつ,蒙驁が単騎で離脱。
別働隊だった麃公と楊端和は,本隊に合流しつつ立て直し。
王翦,桓齮は,追撃してくる丹の三侠に対応。
連合軍は,楚軍は別働隊として武関(函谷関の西?)を目指し,項燕は蒙驁を追跡。
丹の三侠は,王翦,桓齮を追撃。
劉邦は中央,龐煖は右翼,廉頗は左翼で,秦軍本隊を追撃している状況でしょうか。
各方面の状況が刻々と変化しており,簡単な地図や位置の解説がほしいかも?
さあ,痛撃を与えようとする連合軍と,立て直しを図る秦軍のせめぎあいが佳境。
次回,第184話が楽しみです!
<撤収を命じる趙将・李牧〜漫画アクション2021/9/21発売号「達人伝」より〜>
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