「達人伝」感想(第170話・魏軍最後尾)

「達人伝」感想(第170話・魏軍最後尾)

蒼天航路」の王欣太(キングゴンタ)先生が連載している「達人伝」のあらすじと感想を紹介します!

今回は「第170話・魏軍最後尾」です!

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<漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より>

【目次】

「達人伝」感想(第170話・魏軍最後尾)〜追撃の麃公〜

第170話は、ある意味で秦将・麃公(ひょうこう)の一人舞台。

 

目が離せません!

 

荘丹を追撃する麃公は馬を乗り捨て、荘丹の乗る馬の尻尾をつかみます。 

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<荘丹を追う麃公〜漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

蒼天航路」でも、呂蒙張遼の乗る馬の尻尾をつかむシーンがありましたが、これ、めちゃくちゃ大変!

 

じつは、似たような経験があります。

 

以前、近所の公園にポニーが出現(飼ってる人がいるんです)。

突然、のんびり草を食んでいたポニーのスイッチが入り、子どもたちを追いかけ始めたのです。

 

私は「何事!?」「待たんかい!」とあわてて追いかけましたが、小型のポニーとはいえ、ドドッと疾走するさまは相当の迫力。

 

後ろ足で蹴飛ばされそうでしたが、「後ろから捕まえようとすれば、尻尾をつかむしかないな?」「怖すぎる!」「やれるのか、おれ!?」と思いました。

 

幸い、飼い主がポニーを一喝!

 

すぐ子どもたちの追跡をやめたので事なきをえましたが、もしかしたら、私も麃公さん状態になっていたかもしれません(良い子はマネしないでください)。

 

 

追撃してきた麃公に対し、秘剣・絶界で迎撃しようとする荘丹。

が、疲れが残っているため、「ぜ…ぜ…ぜ…」と発動できません。

 

人間くさく、スーパーヒーローじゃないところがいいですね(笑)

「達人伝」感想(第170話・魏軍最後尾)〜庖丁の牛刀〜

荘丹危うし!

というところで、庖丁(ほうてい)が麃公を脚蹴りして、阻止。

 

そういえば、庖丁は秦軍総帥・蒙驁(もうごう) に足蹴り攻撃を食らったことがありましたね。

 

右手に牛刀、左手に手綱と両手がふさがっている状態で距離の長い攻撃を仕掛けるには、「足蹴り」は現実的で有効な方法なのでしょう。(バランスを取るのは超難しそうですが)

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<荘丹を追う麃公と蹴りをくらわす庖丁〜漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

足蹴りで麃公の追撃を断ち切った庖丁に、麃公配下の楊端和(ようたんわ)が襲いかかる。

 

庖丁は、牛刀で楊端和の斬撃を阻止。

 

楊端和の剣を真っぷたつに折りますが、牛刀の刀身が持ち手部分の柄から抜け、茂みへ吹っ飛びます。

 

この描写も、よくよく考えると納得です。

 

遠心力のついた長く重い刀身で斬撃を加えられれば、短い包丁はひとたまりもありません。

刀身が強固であれば、その衝撃は「刀身と持ち手の接合部分」に来るのが道理でしょう。

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<楊端和の斬撃を牛刀で受け止める庖丁〜漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

北陸のどこだったか忘れてしまいましたが、宮本武蔵が使ったとされる刀剣の写真を見たことがあります。

 

生涯無敗の剣豪・宮本武蔵の刀剣!

 

といえば、ものすごい豪剣を想像したのですが、意外にも細くすらりとした、オーソドックスな刀身でした。

 

さらに驚くべきは、茎(なかご)と呼ばれる、持ち手の柄の中に収まる刀身の下部が、錆びていたこと。

 

武蔵は、茎と柄がガッチリ接着するよう、あえて錆びさせて使用していたそうです。

 

真剣勝負において、万が一にも刀の不具合は命取り。

刀身が強靭であれば、ガタがくるのは刀身と柄の接合部分。

 

多くの実戦経験から武蔵はそう考え、だからこそ「茎と柄の接着性」を重視していたのかもしれません。

 

 

伯父貴から譲られた大事な牛刀を吹っ飛ばされた庖丁は、回収するため軍を離れます。

 

ちゃんと回収できるのでしょうか?

これは何かの伏線なのでしょうか?

「達人伝」感想(第170話・魏軍最後尾)〜秘剣・絶界〜 

麃公は、念願の荘丹との一騎打ちに突入。

血に飢えた獣のように襲いかかります。

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<荘丹に襲いかかる麃公〜漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

荘丹は秘剣・絶界を発動。 

 

自ずから然り。

水のように 赤子のように あるがまま。

 

無心になって、麃公の攻撃をひたすらかわします。

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<麃公の攻撃をかわし続ける荘丹〜漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

荘丹は麃公の猛攻をかわし続けますが、額からの流血により視界が妨げられます。

 

流血で視界が妨げられる……

これ、リアルな喧嘩の経験がある人じゃないと、描けない表現じゃないでしょうか?

 

作者の王欣太(きんぐごんた)先生は、そのペンネームの由来が「ごんたくれ」(わんぱく,いたずらっ子という意味の大阪弁)だったそうなので、実体験に基づく描写かもしれません!(笑)

 

じつは私も、流血が目に入った経験があります!

といっても、玄関の靴入れの扉の角に思いきり頭をぶつけて、流血しただけですが(笑)

 

頭を切ると、ドバドバよく血が出るんです。

 

頭からたれてきた血が目に入って景色が赤く染まり、ものすごく戦意喪失して、良い経験になりました(苦笑) 

「達人伝」感想(第170話・魏軍最後尾)〜荘丹の視点〜

ここでさらに注目したいのは、視点。

流血で景色が赤くぼやけるというのは、「荘丹の視点」なんですよね。

 

それも、「荘丹のすぐ近くで撮ったら、こう見える」という客観的・外部的な視点ではなく、「荘丹の眼球の内側から撮ったら、こう見える」という主観的・内部的な視点。 

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<(下段)流血で景色がぼやける荘丹〜漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

ちなみに、少し前のページでは、「麃公視点」の荘丹の流血シーンが描かれています。

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<流血が目に入る荘丹〜漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

このような観点で読んでいる人は多くない気がするのですが、達人伝や蒼天航路はじめゴンタ先生の作品は、「視点の切り替わり」が本当に秀逸!

 

「視点の切り替わり」とは、上記のように登場人物の視点を行き来したり、寄りと引き(ズームイン、ズームアウト)の駆使、ローアングルとハイアングルの使い分けなど、様々な手法の宝庫です。

 

時には、ドローンで撮影したような空中俯瞰の視点や、「神の視点」ともいうべき摩訶不可思議な視点もあります。

 

 

たとえば、一見それほど技巧を凝らしているようには見えない(と思われる)次のページをご覧ください。

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<麃公を観察する荘丹〜漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

私は趣味で写真を撮ります。

 

もし、このシーンを一眼レフカメラで撮るなら、上段(振り返る荘丹)は標準の50ミリ、中段(秦軍の移動)は広角の20ミリ。

 

下段右(荘丹のドアップ)は中望遠の135ミリ、下段左(麃公のアップ)は中望遠の85ミリと、いろいろ焦点距離(画角)を変えないと撮れない構図です。

 

視点が芸術的に入れ替わり、読者を飽きさせない点で、ゴンタ先生の漫画はじつにドラマチックで映画的なんですよね!!

 

 

一方、ゴンタ先生と対照的と感じるのが、漫画「三国志」を描いた横山光輝先生。

 

横山先生の作品は、視点の変化が少ないのが特徴です。

悪くいえば、メリハリや盛り上がりに欠け、淡白でつまらない。

 

良くいえば、どんな複雑で難解な物語も、平易でわかりやすい描写に変換して展開されるので、読者は安心して読み進められる「抜群の安定感」があります。

 

漫画の世界は奥深いですね!

「達人伝」感想(第170話・魏軍最後尾)〜窮地の麃公

荘丹危うし!というところで、鋭い一本の矢。

李牧が救援に駆けつけ、危機を救います。 

さらに、楚の項燕(こうえん=項羽の祖父)も駆けつけてきます。

 

荘丹、李牧、項燕の3人を相手にしなければいけない事態に至り、「落ち着け 俺!」「こりゃ 窮地だ!」と悟る麃公さん。

 

「こいつらを躱して 端和と交流だ」「え!?」「躱せるのか 俺!?」

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<あせりまくる麃公さん漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

下から上へ、馬を両断する項燕の斬撃!

項燕は虎を相手に武を磨いていましたが、馬を縦に真っ二つとは凄まじい!

 

お馬さんがかわいそうなので、できれば人間だけ狙ってください、項燕さん(苦笑)

 

が、「将を射んとすれば、まずその馬を射よ」の言葉どおり、馬を狙うのは当時の戦闘のセオリーのひとつだったのかもしれませんね。

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<麃公の乗る馬を両断する項燕漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

馬が後ろ足立ちになると同時に、宙へ飛んで逃げた麃公さん。

そういえば、麃公さんは前回の169話でも、馬が棹立ちになって宙へ放り出されました。

 

前回は着地に失敗してダメージを負いましたが、今回はばたばたしながらバランスを取り、項燕軍の兵士に蹴りを食らわせ、その馬を奪うことに成功。

 

動物的な回避能力と臨機応変な身のこなしは、さすがですね!(笑)

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< ばたばた空を飛ぶ麃公さん漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

「達人伝」感想(第170話・魏軍最後尾)〜盗扇登場〜

楊端和が率いる別働隊が回り込み、魏軍の先頭を襲おうとします。

 

布陣する余裕がなく、そのまま戦闘に突入しようとする無名(うーみん)ですが、そこに10代目盗跖の女傑・盗扇(とうせん)が登場。

 

先頭を駆けながら「これってもしかして 秦の鎧かい?」と、部下の魁(かい)におっとり尋ねます。

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< 秦軍と遭遇した10代目盗跖こと盗扇漫画アクション2020/12/15発売号「達人伝」より〜>

 

そうか、もしかすると、盗扇は戦場は初めて。

だから、秦の鎧の見わけがつかないんですね。

 

しかし、「ふぅん そうかい」「じゃあ皆の者 おっ始めるよ」という豪胆さは、兄である8代目盗跖を彷彿とさせます。

 

最近の盗扇は、純情で悲壮なイメージがありましたが、達人伝の最初の方に登場した頃は、孟嘗君の名を騙ってわるさを働いたりしており、首領(おかしら)の素質は十分!

 

次週以降の展開が楽しみです!

 

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