達人伝(王欣太)第156話「宿敵!!」感想
【目次】
- 達人伝あらすじ
- 達人伝第156話「宿敵!!」〜あらすじ〜
- 達人伝第156話「宿敵!!」〜黥骨の死〜
- 達人伝第156話「宿敵!!」〜政の「王の風格」〜
- 達人伝第156話「宿敵!!」〜秘剣・絶界〜
- 達人伝第156話「宿敵!!」〜まとめ〜
達人伝あらすじ
「達人伝ってなに?」という方のために,あらすじを紹介します。
中国の春秋・戦国時代。
天下統一を目指す秦に故国を滅ぼされ,親友を殺された荘丹(そうたん)は,秦の野望を砕くことを決意。
志をともにする仲間2人(無名,庖丁)と出会った荘丹は,戦国四君の助けを得ながら秦に対抗する力を蓄えていく。
2代続いての王の死に揺れる秦に対し,魏の信陵君を盟主に五国連合軍が結成。
荘丹たちは,少年・邦(バン)=のちの劉邦とともに,決戦の地へ繰り出す!
ひとことでまとめるなら,
冷徹で安定した体制の樹立を図る「紳士」(=公権力を持つ人々)と、その阻止を図る「流氓」(りゅうぼう=さすらい歩く人々)の戦いの物語です。
作者は,従来とまったく異なる新しい三国志を創造した「蒼天航路」の王欣太(キングゴンタ)先生です。
じつは,「達人伝」は「キングダム」(原泰久先生)とほぼ同じ時代(正確には数十年前)。
秦王・政や宰相・呂不韋など,「達人伝」「キングダム」両作品に共通する人物の「描き方のちがい」を味わうのもおもしろいと思います。
【達人伝公式サイト】
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達人伝第156話「宿敵!!」〜あらすじ〜
連合軍の軍師・蔡要の首を戟に突き刺して掲げる秦の王子・政(のちの始皇帝)と,政の命令により4頭立ての馬車を激走させながら殺戮を繰り広げる黥骨(げいこつ)。
9代目盗跖(とうせき),春申君,龐煖,項燕たち連合軍の各将にも,その不穏な気配が伝わってきます。
いち早く,黥骨たちの猛追に気づいた荘丹。
荘丹にとって黥骨は,かつての主君,親友・玄信,玄信の子・玄俊,玄俊たちを保護してくれた朱涯将軍を殺した宿敵。
一方の黥骨にとっても,荘丹は「あの時の 忌まわしい 邪か!」という目障りな存在。
政にとっても,荘丹は自身の出自を問うてきた不快な存在として,「あいつ…」と認識しています。
荘丹は秘剣・絶界をもって黥骨に挑み,庖丁と無名もこれを援護。
荘丹は黥骨の右腕を斬り飛ばすも,その前腕のない右腕で黥骨に剣を吹っ飛ばされます。
荘丹危うし!
そこへ,「生きてやがったか黥骨!」「ありがてえ」と9代目盗跖が登場。
9代目盗跖の玄修にとっても,黥骨は父,兄,そして兄たち家族を守ってくれた朱涯将軍を殺した宿敵。
黥骨は,盗跖の頭への噛みつき攻撃や左腕の剣で斬撃を与えます。
盗跖は浅傷を負いながらも攻撃をかいくぐり,黥骨の腹部と顔に斬りつけ,最後は腹部から頭部へ斬り上げて勝負を決します。
激闘に息を切らせる盗跖,その無防備な背後の首筋にズドッと戟が突き刺さるところで第156話は終了します。
【前回第155話が気になる方はこちら】
達人伝第156話「宿敵!!」〜黥骨の死〜
ついに,ついに,黥骨が倒されました!
第156話のハイライトは黥骨の死でしょう。
以前,玄俊たちの襲撃を受けて左眼と右腕を失った黥骨は,それでも相変わらず化け物じみた強さを発揮します。
しかし,最後は盗跖の想い,強さ,若さが上回りました。
盗跖 が「父上!」「兄上!」「朱涯将軍!」と一人ひとり微笑む顔を思い浮かべながら戦う姿は涙を禁じえません……
盗跖が斬り上げた最後の一撃は,その積年の想いを象徴するように,兄・玄修が黥骨に与えた斬撃の傷跡をなぞるものでした。
ところで,黥骨には不思議なセクシーさを感じます。
まず、ものをよく噛みます。
右手は義手代わりの剣、左手は槍と両手がふさがっているため、口で馬の手綱をくわえています。
盗跖への第一撃も噛みつき。
格闘技界では,まれに噛みつき行為があり(もちろん反則),噛みつきは野性や獰猛さの象徴といえますが,食事なども含めて口を動かす行為をじっと観察するとセクシーと感じるのは私だけでしょうか?(笑)
また、黥骨の太ももやふくらはぎが、じつに筋肉質でたくましい。
腕や胸など上半身が筋骨隆々のキャラクター造形はありますが,下半身の筋肉美で肉食動物のような獣性を表現するのはさすが。
あらためてよく見たら,他の登場人物は皆ズボンを履いているのに,黥骨だけ履いてませんでした(笑)
そんな獰猛で美しい野獣に与えられるのは,脳漿と腹わたを飛び散らせる無惨な死。
これまで数知れぬ殺戮を行なってきた黥骨には,もっともふさわしい死にざまといえるかもしれません。
盗跖と黥骨の戦闘シーンの迫力は文章では伝えかねるので,ぜひ漫画をご覧ください!
<盗跖と黥骨〜漫画アクション2020/3/17号「達人伝」より〜>
達人伝第156話「宿敵!!」〜政の「王の風格」〜
化け物・黥骨を平然と従える秦の王子・政。
後に劉邦となる少年・邦(ばん)が,「とんでもねえ化けもんだ!だけど…それよりも あんなのを従えて 蔡要じいちゃんをああしてやがるあいつは いったいなにもんだ!?」と,政の「王の風格」がにじみ出る描写です。
これを読んで,ある出来事を思い出しました。
京都で大学生をしていた頃,友人の社長宅に呼ばれて,しばしば夕飯をご馳走になっていました。
夕飯後,あぐらをかいてくつろいでいると,社長の子ども(7歳くらい)が来てソファ代わりに股ぐらに座り,テレビゲームを始めました。
そして振り向きもせず,「きみは貧乏なんやろ?だからうちで飯食わせてもらっるんやろ?」と言うのです。
蛙の子は蛙,子どもに社長の風格を感じた瞬間です(苦笑)
そして政は,蔡要の首が刺さった戟で,荘丹と盗跖を攻撃します。
首が刺さった重い戟による攻撃など,サイコパス確定です(笑)
とどめは,無防備な盗跖の背後への一撃。
戦場に卑怯もへったくれもなく,大人と子どもの区分すらないのかもしれませんが,冷徹な悪意を感じさせます……
<秦の王子・政〜漫画アクション2020/3/17号「達人伝」より〜>
達人伝第156話「宿敵!!」〜秘剣・絶界〜
黥骨への攻撃の口火を切ったのは,荘丹の秘剣・絶界。
秘剣・絶界が発動されるとき,荘丹は白髪になるんですよね。
秘剣・絶界とはなにか?
白髪は何を表しているのか?
以前,荘丹たちは達人の境地について「自ずから然り 自分を自然に還す 水のように 赤子のように あるがまま」「自ずとやってきて 自ずと開いていく…達人ってのは あの感じを自在にやれる奴じゃねえのかな」と語っていたことがあります。
つまり秘剣・絶界とは,達人の境地で発揮される剣技。
ふ〜っと深い大呼吸をすることで達人の境地に入り,秘剣・絶界を発動。
しかし,神がかった無敵の状態ではなく,次の瞬間には元に戻ります。
荘丹の祖父・荘子が語っていた達人の境地。
現代風の俗っぽい表現でいえば「ゾーン状態」に該当し,常人にはちょっと体得しがたい境地かもしれません。
じつは,「達人伝」というタイトルより,「紳士流氓伝」の方がストーリー全体を表現するのにふさわしいのではないか?と思うことがあります(笑)
しかし,この秘剣・絶界の描写を見ると,「達人の境地の追求が原点か!」と思います。
<荘丹と黥骨〜漫画アクション2020/3/17号「達人伝」より〜>
達人伝第156話「宿敵!!」〜まとめ〜
魔性の象徴たる黥骨の死は,達人伝の物語の中でも大きな意味を持つ転換点です。
しかし,歴史的に見れば,信陵君率いる連合軍による追撃戦はこれからが佳境。
次回に乞うご期待です!
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