【蒼天航路(王欣太)の魅力!】桃園の誓い〜春風桃花のころに契りを結び〜
これまでブログで200以上の記事を書いてきましたが,じつは意識的に取り上げてこなかったテーマがあります。
取り上げてこなかったというか,溢れ出す愛が深く広く大きすぎて,どこから手をつけていいかわからなかったからです(笑)
それは,三国志。
横山光輝,陳舜臣,北方謙三など様々な「三国志」に親しんできました。
その中でも私が最高傑作と思い,今なお再読して唸らされる作品が,王欣太氏の漫画「蒼天航路」です。
モーニング誌上での連載終了は2005年ですが,不滅の光を放つ不朽の名作です。
【目次】
蒼天航路(王欣太)の魅力〜三度の飯より好き〜
「蒼天航路の魅力について語れ!」と言われれば,三日三晩でも話し続けられます!(笑)
「無人島に本を持って行くとすれば?」
「死の間際,枕元に置いておきたい本のひとつは?」,
「人生にもっとも大きな影響を与えた本のひとつは?」
いずれの問いに対する答えも「蒼天航路!」と言えば,私の偏愛ぶりが少しは伝わるでしょうか?
蒼天航路(王欣太)の魅力〜箇条書き〜
「もっと具体的に,どこがどう凄いのか言ってくれ!」という向きもあるでしょう。
耐えがたきを耐え,忍びがたきを忍び,その魅力を端的に箇条書きにしてみます。
・「乱世の奸雄(かんゆう)」として悪役イメージのある曹操を主人公に据え,まったく新しい三国志像を展開
・フィクションの多い三国志「演義」ではなく「正史」をベースとして,独自の解釈に基づく世界観を創造
・主役級に限らず,登場人物ひとりひとりのキャラクターが愛おしいほど魅力的
・読むほどに深く,美しく,真理を内包した感動的なセリフの数々
・血沸き肉躍る戦闘から淡々とした心理描写まで,大胆にして繊細なタッチで描き上げる圧倒的な画力
少しは私の敬愛ぶりが伝わったでしょうか?
蒼天航路(王欣太)の魅力〜桃園の誓い〜
魅力を具体的に紹介します。
以下の,私のもっとも好きなシーンのひとつをご覧ください。
<王欣太作・蒼天航路(講談社)その三百七十九「戦線」より抜粋>
<引用ここまで>
蒼天航路(王欣太)の魅力〜解説〜
「春風桃花(とうか)のころに契りを結び 以来 大旱(たいかん)に雲霓(うんげい)を望み四十年」
「今 乱世に わが大王の道を拓く!」
このセリフに私はビリビリしびれてしまうのですが,「なんのことやら?」と思われる方のために解説します。
セリフの人物は,三国志上,最強といわれた武将の関羽(かんう)。
劉備,関羽,張飛の三人は,若き日に「生まれた日は別だけれども,死ぬ時は一緒だ!」「ともに乱世を静めよう!」と桃の花の下で,義兄弟の契りを結びます。
この「義兄弟の契りを結ぶ」こと自体,洋の東西を超えて類を見ない「至純の絆」ではないでしょうか。
親きょうだいですら裏切り行為が日常茶飯事の乱世にあって,3人は生涯この誓いを貫き通します。
混乱の時代にあって,劉備たちは流浪に次ぐ流浪を重ね,10年,20年,30年戦い続けても,寄って立つ土地を得ることができません。
関羽,張飛も天下無双の豪勇を誇りながら,その武を発揮するのは負け戦の時ばかり。
しかし,「流浪の大器」といわ続けた劉備は,ついに50代半ばで念願の地・蜀を得ます。
それまで守り,逃げ続けるばかりだった関羽も,ようやく魏への侵攻を開始します。
桃園の誓いから40年。
40年ですよ!40年!!
関羽はこの時,おそらく50代半ば。
大旱(たいかん)は大ひでり,雲霓(うんげい)は雨の前ぶれとなる雲や虹のこと。
まさに,大干ばつ時に雨を乞い願うような切実な気持ちで,劉備が花咲くのを40年も待ち望んできて,ようやくその基盤を得た。
今回の出撃は,主君・劉備の天下統一の夢をかなえるための第一歩。
天下無双の武を思う存分,敵に叩きつけられる喜びに,関羽の胸はどれだけ躍ったことでしょうか。
<むりやり現代にたとえると>
15歳の頃,「おれたちは義兄弟!死ぬまで一緒だ!」と誓いを立てた3人が,起業と倒産を何度も繰り返して,50代でようやくブレイク。
業界ナンバー3の勢力を占める企業の大黒柱として,他社と激烈な競争を開始した,という感じでしょうか。
うーん,時代背景が違いすぎるので,かえってわかりづらいですね(汗)
蒼天航路(王欣太)の魅力〜まとめ〜
私の溺愛ぶりが少しは伝わったでしょうか?
日本は桃より桜を愛する文化ですが,春風を感じ,桃の花を見かけたら,劉備や関羽の「桃園の誓い」に想いを馳せ,蒼天航路をめくってみてはいかがでしょうか?
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