「ロバート・ツルッパゲとの対話(ワタナベアニ著)」〜控えめに言ってハゲしく好き〜
ワタナベアニさんの「ロバート・ツルッパゲとの対話」を読みました。
ゼンベイが 笑った
ゼンベイが 沸いた
ゼンベイが 震えた
そして ゼンベイが泣いた
と、全米の善兵衛さんが熱く語っていました。
冗談はさておき、この本、好きです。
いや、大好きです。
これを読んでくださる読者のためには、どこがどう好きなのか,論理的かつ明快に説明するのがわかりやすいことでしょう。
具体的には、目次や見出しを付け、箇条書き的にポイントを紹介する。
実際、ふだんはそんな書き方をしています。
でも、それじゃダメなんです。
なぜダメなのか?
<Photo by きくっち>
いわゆる、「アートvsサイエンス」「センスvsスキル」の二項対立で分類するならば、この本は明らかに「アート、センス」サイドの内容。
逆に言うと、「サイエンス、スキル」の話ではない。
「アート、センス」の反対側なので、当たり前ですが。
何が言いたいかというと、
「この本は、サイエンス上のエビデンスが明らかにされた内容である」
とか、
「この本を読んだことで、年収アップに役立つスキルが得られる」
とかいう類の本では,断じてありません。
人生について哲学について、アート、センス的な視点からユーモアとウィットたっぷりに縦横無尽に語る一書。
したがって、目次などをつけたカッチリしたスタイルでは逆に書きにくいのです。
<Photo by きくっち>
「じゃあ、この本から何を得られるの?」と言うと、何も得られない。
むしろ、奪われた。
「ルパン三世カリオストロの城」でクラリスがルパンに心を奪われたように、ロバート・ツルッパゲさん=ワタナベアニさんに心を奪われた。
書いていて少々恥ずかしくなってきたので、ここらで心に刺さった箇所を紹介します。
なお,引用のため一部をさっと読み直すつもりが、ガッツリ2時間かけて再読してしまったことを謹んでドヤ顔で申し添えます。
一番大事なのは、自分が何をしたいかに忠実になること。それを突き詰めていくと、考え方が子どものようになっていきます。大人になるというのは、「夢をあきらめることだ」と思われがちですが、実際はそうではありません。いかに子どものように純粋に、自分に言い訳をせず、やりたいことを実現できるか、にかかっています。
壊れて止まった時計は一日に2回だけ正確な時間と一致するが、狂った時計は一度も合うことがない、というよく知られた言葉があります。これは、自分が正しいと思ったことをし続けていれば、その時はズレているかもしれないけど、いつか他人の方が自分の世界に近づく日が来る。だから自分を貫いた方がいいですよ、いつも誰かを後ろから追いかけるのはいけませんよ、ってことです。
ですから生きているうちに「生きて、やりたいこと」をしなければ間に合いません。行きたいところに行き、やりたいことをやる。それができない理由が「死んだから」ならわかります。ご冥福を祈りますが、生きているなら何か方法がある。他人のアドバイスというのはつねに「そうしない方がいい」に偏りがちです。心配している、というのです。でも持っている可能性を殺してまで無事に生きていくことは、本当に生きていることなんでしょうか。
自分がしたいことをする。したくないことはしない。それを哲学と呼ぼうが、なんと呼ぼうがどうでもいい。人が生まれて、死ぬ。スイッチがパチン、パチンとニ回音を立てる数十年の間に、何をすべきか真剣に考えることは決して無意味じゃない。
<Photo by きくっち>
やたらマジメな内容ばかり引用してしまいましたが,本書の「マジメ対フマジメ」の比率は7:3くらい。
この割合,この感覚が絶妙で、大好きです。
「人生の真実はフマジメに宿る」と全米の善兵衛さんも言っています。
少年ジャンプ的な友情・努力・勝利の方程式を生きてきた凄腕経営者に、「生きているうちに,やりたいことをやろう!」と目をキラキラさせながらマジメに正論を言われると、こちらとしてはぐうの音も出ません。
実際に「ぐう」という言葉を発する人はいないと思いますが、それはさておき、こんなマジメでフマジメなアニキがこの世に存在してくれて、よかった。
本書がこの世に送り出されて、本当によかった。
「今日が人生最後の日だとしても、悔いのない日々を送っているわい!」と胸を張って言える人は、本書を読む必要はないでしょう。
そうじゃない人、特に鬱々とした閉塞感に悩んでいる人にとって、本書は乾いた大地に降り注ぐ慈雨のようにあなたの心に染みわたり、癒し、励ましてくれることを、全米の善兵衛さんが全力で保証します。
最後に。
本書の内容は、ほぼほぼ賛同するところですが,1点だけ、にわかには同意しかねます。
ウィトゲンシュタインは屋根に登るためのハシゴは登り終わったら不要になると言っているが、この本もそうなれるとうれしい。レッツ・ブックオフ。
私は屋根へ登る途中、2歩登って3歩降りたり、「あれ、この屋根でよかったっけ?」とウロウロ迷いそうです。
登ったあかつきには、本書をより多くの人に知ってもらうためブックオフへ送り出そうかと思いますが、それまでは大切に手元に置いておき、屋根へ導く「地図」とするつもりです。
【ワタナベアニさんの公的HP】
【ワタナベアニさんのnote】