【民間企業と公務員の比較】経験者が語る「公務員の流動性の低さ」
私は,国家公務員,地方公務員,民間企業で仕事をした経験があります。
今回は,「公務員の流動性の低さ」についての考察です。
【目次】
- 【結論】
- 【流動性の低さとは?】
- 【途中から公務員になる人が少ない理由】
- 【公務員をやめる人が少ない理由】
- 【あえて流動性を低くする仕組み】
- 【優秀な人材が入りにくい】
- 【優秀な人材が劣化する】
- 【モチベーションが維持・向上しにくい環境】
- 【まとめ】
【結論】
公務員は転職者,退職者の流動性が低くなるよう設計されており,そのことで行政の安定性が確保されている面もありますが,中長期的に人材の質が低下する側面も否めないと思います。
【流動性の低さとは?】
公務員の流動性の低さとは,転職者,退職者の出入りが少ないことです。
つまり,「①途中から公務員になる人」「②公務員をやめる人」が,きわめて少ないのです。
民間企業では,離職率が数%~10%,20%を超えるところも珍しくありませんが,多くの公務員組織の離職率は100人に1人未満=1%未満と推察されます。
【途中から公務員になる人が少ない理由】
「①途中から公務員になる人が少ない理由」は,年齢制限や試験内容が難しいため。
公務員の種類によって異なりますが,おおむね30歳までしか受験できません。
試験内容も,多くの公務員試験では,憲法,民法,刑法,労働法,マクロ・ミクロ経済,数的処理,判断推理,英語,文章読解等の幅広い科目が出題されるため,勉強しないで合格するのはまず不可能です。
私は国家公務員Ⅱ種試験と地方公務員試験に合格しましたが,民間企業の就職活動との両立はできませんでした。
【公務員をやめる人が少ない理由】
「②公務員をやめる人が少ない理由」は,2つ考えられます。
1つは,公務員は法律で身分が保障されており,懲戒免職,分限免職に該当する正当な事由がない限り,免職されることはないため。
2つは,「苦労して公務員になったのだからやめたくない」「転職しようにも公務員はつぶしがきかないだろう」「民間企業はリストラがあって恐ろしい」「待遇が非常に良いわけではないけど非常に悪いわけでもない」など保守的な考えのため,です。
【あえて流動性を低くする仕組み】
なぜ,流動性が低い仕組みにしているかといえば,「安定した行政運営を行うため」です。
つまり,「頻繁に人材が出たり入ったり,レベルが不安定な人材が入ってきては,国民のための安定した行政運営ができない!」との懸念から,入り口でハードルを上げて人材を絞り込み,かつ終身雇用を保証することで退出インセンティブを低下させているのです。
具体的には,「民間企業に浮気せず,公務員だけを本気で志望する人材」「公務員試験を突破できるくらいの能力がある人材」を求めており,その狙いは成功しているといえるでしょう。
では,狙いどおり低い流動性を実現して,安定した行政運営が実行できるのであれば,何か問題があるのでしょうか?
【優秀な人材が入りにくい】
問題は2つ考えられます。
1つ目は,採用時に「安定した身分狙い」の,あまり優秀でない人材が増えること。
特に最近は,意欲・能力のある優秀な人材の多くは,自分のやりたいことができ,実力に応じた見返りが得られる民間企業に流れる傾向があります。
批判を恐れずに極論すれば,超一流・一流の人材の多くは民間企業か起業を選択し,二流以下の凡人が公務員を選択するイメージです。
【優秀な人材が劣化する】
2つ目は,二流,三流の人材の劣化です。
「二流以下の凡人が公務員を選択するイメージ」と書きましたが,これまた批判を恐れずに極論すれば,公務員の多くは二流,三流の凡人がメインでよいと思います。
日本は法治国家かつ民主主義社会であり,国民が選んだ政治家が決定した法律等のルールに則り,効率的かつ効果的に行政を運営するのが公務員の役割です。
社会変革をもたらすイノベーションを生み出すようなスター人材は,基本的に必要ありません。
しかし,実務を手堅く淡々と実行する二流,三流の人材も,流動性の低い環境に置かれ続けることで劣化します。
【モチベーションが維持・向上しにくい環境】
想像してください。
懸命に汗水たらして働いて成果を挙げても,民間企業のように評価,給料,役職が目に見えて上がることはなく,かといって転職することも難しい。
一方,人並みに働いていれば,あるいは人並み以下でも,まずリストラにはならない。
これは,良くも悪くも平等を旨とする社会主義・共産主義に近い構造ではないでしょうか?
しかも,仕事は正確かつ迅速にやって当たり前,ほめられることなどありません。
逆に,少し間違ったり遅れたりすれば,国民,マスコミ,政治家からものすごいバッシングを浴びます。
「公務員は税金をもらっているのだから,志高く,公のため仕事に励みなさい!」と言われても,このような状況で人間はモチベーションを維持・向上できるものでしょうか?
【まとめ】
一部では許しがたい不正行為や怠慢もありますが,なんだかんだいって,日本では警察,消防,病院,道路,水道,教育,福祉,子育てなど,公務員が粛々と日々の仕事に励んでいるからこそ,世界トップレベルの社会インフラや安全・安心社会を築いてこられたのではないでしょうか。
もし,警察,消防が来てくれなかったら?
もし,道路,水道,公共建築物が適切に整備・維持・管理されていなかったら?
もし,教育,子育て,福祉のサポート体制がなかったら?
流動性の低さにより,これまでは曲がりなりにも行政の安定性が機能してきましたが,中長期的には構造的な理由から人材が劣化し,安定した行政の運営が難しくなるのではないかと懸念されます。
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