【民間企業と公務員の違い】人材活用の違い
【民間企業と公務員の違い】人材活用の違い
私は民間企業(新聞社),地方自治体(政令指定都市),中央省庁(○○省)で働いた経験があります。
これら3つの異なる業界で働いた経験のある人は,数10万人〜100万人に1人くらいの希少性があると思われます。
(日本に100人はいるかもしれませんが,たぶん1,000人はいない!)。
そこで,私自身の具体的な体験に基づき,人材活用の違いについて紹介します!
【目次】
【民間企業と公務員の違い〜君の考えはちがう!〜】
地方自治体(政令指定都市)の人事担当課と面談した際のエピソードです。
私は異動の打診を受けました。
そこで,「じつは今の仕事は苦手だったんです。新しい仕事にチャレンジするきっかけをいただき,ありがとうございます!」と,Aさん(人事担当課の管理職)に答えました。
するとAさんは,「君の考えはちがう!」
Aさんいわく,自分は人事系の経験が長かったが財務系へ異動。
当初は慣れない仕事に四苦八苦したが,やがて習熟。
公務員の仕事は,そんなに高度に専門的な仕事ではない。
誰だって,努力すればできるようになる!
どんな仕事にも苦手意識を持たず,積極果敢に取り組んでほしい!
そう言って,Aさんは励ましてくれました。
【民間企業と公務員の違い〜人事担当課の考え方〜】
Aさんの話は一見正論で,感動すら覚えました。
ただ,そこには,「人事担当課の考え方のエッセンス」が凝縮されています。
①基本的に公務員の仕事は専門性が低く,難しくない
②どんな仕事もそつなくこなせる,オールラウンドな人材が理想
③組織の維持運営が最優先であり,個人は組織に適応すべき
この考え方は,ある意味でよく理解できます。
たとえるなら,人事担当課の仕事はパズルの空白を埋める作業。
「ここが空いているから,あちらから持ってこよう」
「あちらが空いたから,そっちから持ってこよう」
と,手持ちのピースをやりくりして埋めなければいけません。
ピースの数=職員数が多いほど,やりくりは大変です。
特に,地方自治体(市町村)の仕事は,総務,財務,税務,保険,福祉,衛生,都市計画,建設,経済,議会,監査,選挙など多岐に渡ります。
「職員ひとりひとりの適性や好き嫌いを聞いていては,キリがない!」「パズルを完成させられない!」というのが,人事担当課の本音でしょう。
一方,民間企業の場合,そもそも業界やジャンルが限定的であり,たとえば総務系から営業系へ異動させることなど,企業利益の最大化の観点からレアケースでしょう。
当時は,感動とモヤモヤを感じましたが,今は「ちょっと,ちがうのではないか?」と思います。
【民間企業と公務員の違い〜公務員の仕事はそれほど簡単でない〜】
「①公務員の仕事は専門性が低く難しくない」といいますが,私にいわせれば,それほど簡単ではありません!
たとえば私は,「障害者の相談支援」「財務バランスシートの作成」「システムの設計」「事業計画の策定」「国際会議の誘致」など,多様な業務を行ってきました。
これらは,民間企業であれば,福祉事業担当課,経理会計課,システム担当課,経営企画課,営業課など,まったく別分野の仕事です。
能力の高い人なら,ササッとこなせるのかもしれませんが,私はけっこう苦労しました。
ひととおり,与えられたミッションは果たしたつもりですが,「余人をもって替えがたい圧倒的な成果を出せたか?」と聞かれれば,残念ながら「はい!」とは言えません……
つまり,医師,弁護士,会計士のような専門性はなくても,公務員の仕事も「相応の専門性」が求められます。
「そつなくこなす(60〜80点)」ことはできても,「高い付加価値を生み出す(80〜100点)」ことは容易でありません。
よほど本人の意欲,能力がフィットしない限り,高いパフォーマンスを発揮することは困難でしょう。
【民間企業と公務員の違い〜オールラウンドな人材は少数〜】
「②どんな仕事もそつなくこなせるオールラウンドな人材が理想」といっても,現実にそのような人材は少数です。
学生時代の勉強でも,すべての科目において得意不得意がなく,「オール100点」を取れるような人材は極めて少数です。
現実には,「国語は90点だけど,数学は50点」「数学は80点だけど英語は40点」など,とかく人間の能力には「特長」「偏り」があります。
机上の勉強でも得意・不得意があるのに,現実の仕事で得意・不得意がないわけありません!
さらにいうと,その分野の仕事の「能力」がそこそこあったとしても,本人がやりたくない=「好きではない」「意欲がわかない」場合もあります。
「公務員は幅広い科目の試験を突破してきたのだから,どんな仕事でもしっかり成果を出せるオールラウンドな能力があるはず!」というのは幻想だと思います。
【民間企業と公務員の違い〜個人より組織優先〜】
「③組織の維持運営が優先であり,個人は組織に適応すべき」というのは,「組織ありき」の「組織>個人」の考え方です。
組織が「三角=△」の形の仕事を求めれば,個人は「三角=△」に変形し,組織が「四角=◇」の形の仕事を求めれば,個人は「四角=◇」に変形すべきである。
もとの個人の形が「丸=○」であろうと,組織のパズルを完成させるためには関係ない。
じつは,この考えは民間企業も同様です。
ただし,民間企業と公務員との最大のちがいは,民間企業はシビアに利益を追求し続けないとつぶれること。
したがって,民間企業は,営業畑の社員を経理畑に異動させたり,総務畑の社員を営業畑に異動させたり,ミスマッチによる生産性を低下させる事態は極力避けます。
と同時に,「利益を最大化させるにはどうすればいいか?」を考えて,その意欲・能力=適性を備えた人材を配置させます。
【民間企業と公務員の違い〜まとめ〜】
最近は,公務員組織でも本人の希望を聞き,適性を活かす人材配置に取り組んでいます。
その結果,特定の部署を希望して異動できることもありますが,ずっといられるわけではありません。
役所の業務は,市民生活,福祉,環境,財政,経済,街づくり等々幅広いので,どこへ異動するかは本当にわかりません。
「志高く,利益追及を気にせず,幅広い業務を経験したい!」「どんな仕事でもバランスよくそこそこ適応できるだろう!」という人は,公務員に向いていると思います。
実際,多くの公務員は,ズバ抜けた90~100点は難しくても,60~80点くらいの仕事は着実に実行します。
一方,「自分はこの分野での意欲・能力がある!」と業種や職種のイメージがある人は,オールラウンドが求められる公務員は避け,民間企業を目指した方がいいでしょう。
実際に働いてみないと,わからないことは多いもの。
公務員への就職,転職を考えている人は,できる限り「実際に働いている職員の話」を聴くことをオススメします!
実際,私は民間企業から公務員に転職する際,いきなり希望部署に電話して「ぜひ,話を聞かせてください!」と頼み,後日訪問。
30分ほど,担当者からいろいろ教えてもらい,パンフレットでは伝わらない現場感や肌感覚の情報をつかみ,その後の面接試験でも有効に活用することができました。
役所側からすれば,そのような依頼は断りにくいし,意欲のある人材は好感が持てるもの。
ちなみに,もう1ヶ所訪問した別の部署は,いかにもめんどうくさそうで感じの悪い対応でしたが(笑),それも「このような人もいるのだ!」という重要な情報です。
フィットする仕事と出会うため,積極的に行動していきましょう!
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