【映画「万引き家族」感想】〜現代社会の切なさの告発〜
こんにちは。
ウェルビーイング・クエスター(心と体のしあわせ探究者)きくっちです。
第71回カンヌ国際映画祭で,最高賞のパルム・ドールを獲得した是枝裕和監督の「万引き家族」。
日本人監督作品としては,1997年の今村昌平監督「うなぎ」以来21年ぶりの快挙。
この記事は,内外で高い評価を受けたこの映画を,実際に観た感想です。
【あらすじ】
家主である祖母・ハツエ=推定70代(樹木希林)。
日雇い仕事の父・オサム=推定50代(リリー・フランキー)。
クリーニング店で働く妻・ノブヨ=推定30代(安藤サクラ)。
風俗店で働くノブヨの妹・アキ=推定20代(松岡茉優)。
学校に通わない息子・ショウタ=推定小学校5,6年生(城桧吏)。
家族の安定した収入源はハツエの年金くらいで,オサムとショウタが万引きすることで,日々の食料や生活用品を手に入れていた。
5人は古く狭い一軒家で肩を寄せ合い,毎食カップラーメンを啜るギリギリの暮らしを送りながらも,笑顔が絶えることはなかった。
冬の寒いある日,近所のアパートの廊下で幼い女の子・ユリ(推定4,5歳)が震えているのを見つけ,見かねたオサムが連れて帰る。
体中に暴力を振るわれた傷跡のあるユリを心配し,6人目の家族として迎え入れた。
しかし,ある事件をきっかけに家族はバラバラとなり,それぞれの「つながり」の秘密が明らかになっていく……
【感想】
感想を一言でまとめるならば「切なさ,やるせなさ」。
誰も悪くない。誰も悪人ではない。むしろ,心根はとてもやさしい人たち。
なのになぜ,このような状況へ追い込まれたのか?
もちろん万引きは悪であり,いかなる理由があろうと罪は罪。
思い起こすのは,ヴィクトル・ユゴーの名作「レ・ミゼラブル」。
主人公のジャン・バルジャンは,貧困ゆえの空腹を満たすべく盗んだひときれのパンのため,19年間も牢獄生活を送ることに。
ジャン・バルジャンは神父との出会いにより改心しますが,この映画は実際に日本で起きた事件を下地としており,現在進行形の社会問題。
明るい未来や解決策は示されておらず,現代社会の告発作品と言えます。
是枝監督は2013年に制作した作品「そして父になる」で,いわゆる「産みの親」「育ての親」どちらが家族にとって幸せか「血のつながり」を問いました。
本作品でも「血のつながり」は重要なテーマ。
「血はつながっているが,暴力を振るいネグレクトする家族」と「血はつながっていなくても,ともに寄り添う家族」,どちらが幸せなのか?
現代社会では,「血のつながり」が制度的に圧倒的に重視される一方で,そのつながりを保つ余裕がなかったり,疎ましく思ったりする家族が増えていることも事実。
そこに,善意の第三者はどこまで関われるのか。
どれほどの善意に溢れていようと,やはり血のつながりには叶わないのか。
「切なさ,やるせなさ」が,時間と共に広く,深く残響する名作です。