「ドクタースランプアラレちゃん」〜やっぱり鳥山明先生は天才!〜
夜,子どもへの読み聞かせで,「ドクタースランプアラレちゃん」を久しぶりに読みました。
妻の実家にあったもので,昭和56年(1981年)発行なので38年前!
しかし,そのおもしろさは全く色あせず,子どもたちと大笑いするとともに,しみじみ考えさせられて,「やっぱり鳥山明先生は天才だ!」と思いました。
<集英社刊「カラーランド ドクタースランプアラレちゃん」表紙より>
【目次】
【英雄スッパマン】
スッパマンは,自分では正義の味方のつもりですが,「アホ」とか「ドジ」とか,みんなにバカにされまくっています。
まわりに認められないため,こっそりジュースの中にゴキブリを入れたり,ダイナマイトを投げ入れたり嫌がらせをして,ますます嫌われています。
しかし,アラレちゃんは,スッパマンごっこ遊びをするなど無邪気に憧れており,遊びに誘います。
アラレちゃんを怖がらせてやろうと考えたスッパマンは,瓦わりをしてみせますが,3枚中1枚しかわれません。
アラレちゃんは,「ほい!」と言って「地球わり」をしてみせます。
<集英社刊「カラーランド ドクタースランプアラレちゃん」P14,15より>
給食の早食い対決や,勇気を出してウンチを触る対決をしますが,どれもスッパマンは勝てません。
しかし,最後のジャンケン対決で,スッパマンはアラレちゃんに勝利します。
その後,アラレちゃんは,スッパマンの大好物である梅干しを村中から買い占めて,スッパマンを家へおびき寄せます。
「ジャンケンの復しゅう戦をやる気だな」「もし負けたら,わたしは英雄として生きる自信をうしなってしまう」と悩むスッパマンに,なんとアラレちゃんはサインをねだります。
サインはしない主義だと言いながら,今回は特別だと言ってスッパマンはサインをし,「いそがしいので失礼!」と出て行きます。
<集英社刊「カラーランド ドクタースランプアラレちゃん」P24より>
【笑いの普遍性】
ゴキブリやダイナマイトを使ったイタズラ,地球わり,早食い対決,ウンチ対決などのネタは,時代,世代を超えてシンプルに笑えます。
なかでも「地球わり」は,漫画ならではのスケールの大きなナンセンスさで,スッパマン同様,目が飛び出すくらい笑いました(笑)
【満たされないスッパマン】
「正義の味方」のセルフイメージがムダに高いわりに,行動が伴わないスッパマン。
周りに評価されない不満から,ルサンチマン(弱者が強者に対して持つ恨み,妬み,復讐の感情)的な迷惑行為を繰り返しては,自己を正当化しています。
スッパマンを他人事として笑い飛ばすこともできますが,「自分はもっと評価されていいはず!」「周りはどうしてわかってくれないんだ?」と程度の差はあれ,私たちも似たような経験があるのではないでしょうか?
【無邪気な愛で包むアラレちゃん】
しかし,そんな満たされない心を抱えるスッパマンに,アラレちゃんはサインをねだることで無邪気な愛で包み,救います。
じつは,最後の「やった やった 生まれてはじめてサインしちゃった!うれしい〜!!」のページを読み,私は唸ってしまいました。
なんと大きな,お月さま。
なんと小さな,スッパマン。
小さな小さな人間の心は,サインをするという小さな小さな行為で,満たされてしまう。
これは,ひとつの真実です!
鳥山明先生は1955年生まれなので,1981年当時は26歳。
小難しいことを考えて描いたのではないでしょうが,人間の本質を鋭く切り取る視点は天才的と感じました。
【まとめ】
鳥山明先生といえばドラゴンボールが代表作ですが,ドクタースランプアラレちゃんも,なかなかどうして名作です。
図書館や漫画喫茶で手軽に読めるといいのですが,新作に押されてあまり置いていないかもしれませんね(^^;)