【民間と公務員の違い】経験者が語る地方公務員の仕事(中央省庁派遣編)
【民間と公務員の違い】経験者が語る地方公務員の仕事(中央省庁派遣編)
民間と公務員の違いはなんでしょう?
公務員を目指している大学生や,転職を考えている社会人も,地方公務員がどのような仕事をしているのか,よく知らないのが実情ではないでしょうか?
私は,民間企業(新聞社),地方自治体(政令指定都市 ),中央省庁(○○省)で働いた経験があります。
手間みそで大変恐縮ですが,これら3つの異なる業界経験のある人は,数10万人〜100万人に1人の希少性があるのではないでしょうか?
そこで,私自身の具体的な体験に基づき,「民間企業」「国家公務員」と比較する視点から,
パンフレットなどでは語られない「地方公務員の仕事のリアル」を紹介します!
今回は「中央省庁派遣編」です!
【目次】
- 【民間と公務員の違い】経験者が語る地方公務員の仕事(中央省庁派遣編)
民間と公務員の違い〜この記事を読んでほしい人〜
・就職先,転職先として,地方公務員を検討している人
・民間企業,地方公務員,国家公務員の違いを知りたい人
民間と公務員の違い〜地方公務員なのに中央省庁で勤務?〜
地方公務員のメリットの一つに,全国転勤がないことが挙げられますが,一部例外あり。
主に,県庁職員や政令指定都市職員の場合,東京事務所や中央省庁へ異動を命じられることがあります。(確率的にはかなり低いですが)
「命じられる」と書きましたが,正確には「打診される」。
つまり,「断る」こともでき,家族の事情等を理由に断る人もいます。
あるいは,「数人に断られて,あなたしかいない!どうか引き受けてもらえませんか?」
と人事担当課に泣きつかれ,やむなく引き受けた人もいます。
「あなたの優先順位は低かったのですが」と言っているのと同じで,かなり失礼な話だと思いますが…(苦笑)
民間と公務員の違い〜中央省庁派遣のメリット,デメリット〜
「転勤がないと思って地方公務員を選んだのに東京勤務なんてイヤだ!」という気持ちもわかります。
が,実際に中央省庁勤務を経験した私の結論は,せっかく声を掛けられたのなら,チャンスを生かすべき!
以下,メリット,デメリットを紹介します。
○中央省庁勤務のメリット
・日本の政治・経済・文化の中心地で,最先端の情報,トレンドに触れられる
・公務員の最高峰である霞が関で,優秀なキャリア官僚の仕事ぶりを学べる
・キャリアに箔がつく(笑)
○中央省庁勤務のデメリット
・引越が面倒,地獄の通勤ラッシュ,高い物価
・持ち家の住宅ローンと東京の家賃の二重の家賃負担
・配偶者が仕事を辞められず別居となる,子育て環境として不適切
民間と公務員の違い〜家族問題〜
当時,私は既婚で子どもはいませんでしたが,妻はフルタイムの正職員。
悪い上司が「嫁さんを置いて行った方が楽しめるぞ!」とアドバイスをくれましたが(笑),妻に打診したら「じゃ,仕事辞める!」
私にゾッコンだったからではなく,仕事が体力的,精神的にしんどく,中長期的に続けるのは厳しいと悩んでいて,ちょうどよいタイミングだったそうです(苦笑)
少々脱線しますが,東日本大震災の津波により,妻の元職場の同僚は亡くなりました……
妻が辞めていなければ,同僚と共に行動する決まりだったので命を落としていたと思います…
人間万事塞翁が馬,何がどのような結果に結びつくか,本当にわかりません……
話を元に戻すと,家族が同意・協力してくれて状況の整理がつくならば,多少無理をしてでも行くべき!と思います。
東京にいる間に子どもが生まれたのも,良かった点の一つ。
私以外にも,「東京勤務となり,ほしかった子どもが生まれた!」という人が複数います。
環境変化が人体に及ぼす影響は,想像以上に大きいのではないでしょうか?
また,東京は出会いが多いのでしょう,「彼氏彼女,結婚相手を見つけた!」という独身男女も数人います。
民間と公務員の違い〜住宅問題〜
住宅問題に関しても,まさに私は住宅ローンを組んで家を新築し,完成して住み始めようというタイミングでしたが,1日も住むことなく東京へ(涙)
盆と正月に帰省して暮らす以外,2年間空き家状態で非常にもったいなかったのですが,幸い,二世帯住宅で親が時々メンテナンスをしてくれたので,その点は非常に助かりました。
東京の賃貸住宅も,一部家賃補助は出たので,「2年間放置して,新築住宅特有の化学的なにおいが抜けた!」「子育てに良い環境が整った!」と前向きに捉えることにしました。
民間と公務員の違い〜エリート官僚の仕事についていけるのか?〜
かくいう私も,「どうしよう!東大卒だらけの最優秀のエリート官僚についていけるかな?」と不安いっぱいでした。
が,数ヶ月後には,「キャリア官僚?ふつうだよ!だって同じ人間だもん!」とエラそうに言っていました(笑)
人は,未知のものに恐れを抱きますが,知ってしまえば,意外とどうということはない,ということはよくあります。
「幽霊の 正体見たり 枯れ尾花」という句がありますが,「官僚の 正体見たり 異星人」ではなく,「官僚の 正体見たり 日本人」というのが率直な感想です(笑)
もちろん,物事の本質を素早く理解する能力や,臨機応変な説明能力はじめ,「優秀だなあ!」「すごい!」「真似しよう!」と感じる方々がいることは,間違いありません。
しかし,少なくとも,凡人である私がおよそ理解できない,たとえるなら,エイリアンやモンスターのような人物に出会うことはありませんでした。
民間と公務員の違い〜身分,給与〜
地方公務員が中央省庁へ出向する場合,「研修生」か「割愛職員」の身分になります。
「研修生」は,給与も地方公共団体の負担で,身分も地方公務員のまま。
「つぶれても,また派遣してくれるだろう」と,こき使われる場合もありますが,地方自治体も優秀な人材は余っていないので,つぶされたら「もう派遣しない!」と打切りもしばしば。
友人の研修生は,「昨年度,A市からの研修生は5月で倒れて後任が打ち切りになってさ〜B市から来てくれたキミはタフで助かるよ〜」と言われたそうです(汗)
一方の「割愛職員」は,給与が国の負担。
身分も一度地方公務員を辞め国家公務員扱いになるので,「お前のカネは国が払っているんだからな!」と,こき使われる可能性大です。
私は,「研修生」として派遣されたので,マシでした。
しかし,「割愛職員」として派遣された同僚は,大して英語も話せないのに,ワクチンを打たれまくって海外に出張させられたり,本当に大変だったそうです……
民間と公務員の違い〜派遣期間〜
派遣期間は,だいたい1〜2年。
私の聞く限り,総務省は1年,その他の省庁は2年が多い印象です。
30年も,40年もあそこで働き続けると考えると,気が遠くなります。
しかし,1,2年であれば,「お金をもらいながら,貴重な勉強をさせてもらえる!」と前向きに捉えられるのではないでしょうか?
民間と公務員の違い〜仕事内容〜
省庁や配属先により千差万別ですが,私は某中央省庁の某部署で,委託調査,税制改正要望,法改正準備などに携わりました。
基本的に,前任者の仕事を引き継ぐ形で,「ネットや関連文献で調査する」「各種資料を作成する」など裏方的な仕事が多く,分類的には企画・調査系の業務です。
おそらく,地方から派遣される研修生は,この「企画・調査系業務」を担当することが多いと思われます。
ただ,裏方とはいえ,自分が作成した資料をHPで公表したり,他省庁に提出したり,上司が政務三役(大臣,副大臣,政務官)にレクチャーしたりするので,けっこう責任は重い。
内容の正確さや論理の整合性はもちろん,「こういった視点から突っ込まれないか?」と想定問答を作成し,もれなくダブりなくポイントを資料に盛り込むよう細心の注意を払いました。
民間と公務員の違い〜年間スケジュール〜
これまた,省庁や配属先により千差万別です。
一般的な傾向としては,国会開会中(1〜6月),税制改正要望および予算要求時期(8〜12月)は忙しいでしょう。
ただ,本当に職場により,時期により異なります。
私自身,毎日定時で帰宅していた時期もあれば,夜中の2,3時まで働いた時期もあります。
研修生の身分だと,一般にプロパー官僚より残業は少ないと思いますが,一応,地方公共団体を代表して派遣されている手前,「残業したくない!」と声高に叫ぶこともできません(笑)
私は派遣中に子どもが生まれたので,1ヶ月程度でも育休を取りたいと考えましたが,派遣元の上司に「気持ちはわかるけど,ちょっとねえ…」とやんわり潰されました(苦笑)
多忙な職場に当たるかどうかは運不運であり,忙しさを自分でコントロールしがたい点は難点ですね。
民間と公務員の違い〜向いている人,向いていない人〜
一言で言えば,「レジリエンス」が求められます。
レジリエンスとは,「しなやかさ,強靭さ,回復力」などという意味です。
地方から中央省庁へ派遣されれば,住環境,家庭環境が変わり,職場で新たな人間関係を一から築き,潤滑に仕事を進めなければなりません。
と書くと,極めて高度な能力が必要そうですが,
「ある程度の環境変化に適応する能力」
「ある程度の人間関係を築ける協調性」
「ある程度の精神的・体力的な耐久力」
があれば,十分に務まると思います。
誰でもできる!とは言いませんが,地方公務員になるくらいであれば,「何を言っているかわからない!」「仕事についていない!」といった業務能力上の心配はほぼありません。
それより,「初めて出会う境遇が異なる人たちと,潤滑な人間関係が築けるか?」というコミュニケーション能力がきわめて重要と思います。
それさえあればなんとかなり,逆にそれがない人は非常に厳しいと思います。
民間と公務員の違い〜やりがい〜
やりがいは間違いなくあります!
あからさまに「私たちが日本を動かしているんだ!」と言う人はいませんが,現実問題として,霞が関には「法治国家・日本」の根幹を動かす権力が集中しています。
たとえば,法律やガイドラインの策定・施行は,社会にとてつもなく大きな影響を与えます。
その影響力の大きさは,良くも悪くも地方公務員や民間企業の比ではありません。
最近では,天下国家や仕事の意義を声高に語る官僚は,少ないかもしれません。
たとえ,時の首相がコロコロ変わろうと,外国などと比べて日本は非常に安定した行政運営がなされているのは,ひとえに霞が関の官僚の優秀さによるところが大きいでしょう。
間接的な仕事でも,仕事の責任のやりがいは,折に触れて感じ取ることができるはずです。
民間と公務員の違い〜大変な点〜
基本的にどこの職場でも変わらないと思いますが,大変なポイントは2つ。
1つは人間関係,もう1つは残業。
私は,人並みのコミュニケーション能力や体力があり,良好な人間関係を築き,残業時間にも配慮してくれる職場環境に恵まれ,「死ぬほど大変!」という記憶は思い当たりません。
もっとも,私自身は被害を受けなかったものの,物凄いパワハラを受けている同僚や,毎日遅くまで長時間労働している同僚はいましたが……
私が環境に恵まれたのは,もしかしたら,ほぼ「運」なのかもしれません。
私がいかに努力しようと,ひどい人間関係の環境に放り込まれ,長時間労働を強いられたら,コントロールのしようがありません。
今思えば,そのような良い職場環境に恵まれるかどうかは,相当なリスク。
可能な限り,「派遣を打診された時点で,前任者に状況を聞くこと」「前任者がスーパーマン的な人物で,自分も同様の仕事ぶりを期待されないか確認すること」をオススメします。
民間と公務員の違い〜まとめ〜
地方公務員にとって中央省庁派遣は,組織文化の異なる環境へ飛び込むわけで,最もストレスの大きい人事異動のひとつです。
逆に言うと,これを乗り越えられれば,怖いものはなし!(たぶん)
これを上回る劇的な環境変化は,民間企業への転職くらいでしょう。
めったにないチャンスであり,人事担当課から打診されたら,それは自分が「力量あり!」と見込まれてのことなので,都合のつく限り受けた方がいいでしょう!
痩せても枯れても腐っても(といったら大変失礼ですが),霞が関はやっぱり霞が関。
今もって,日本の政治・経済は霞が関を中心に回っています。
その後,いかなるキャリアを歩むにしろ,霞が関の空気を吸って仕事をした経験は,とてつもなく大きな自信と財産になると思います!
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民間と公務員,両方を知る具体的な経験に基づき,じつはとても大きな人材活用の違いを解説します!