LGBT、ネグレクトを知ってますか?映画「彼らが本気で編むときは、亅
2017年2月公開。ベルリン国際映画祭で,日本映画初のテディ審査員特別賞,観客賞を受賞。
また,文部科学省選定作品で,LGBT先進自治体である東京都渋谷区,渋谷区教育委員会の初の推奨作品にも選定されています。
そう,この映画は,LGBTの性的少数者に対する差別や,育児放棄問題(ネグレクト)を取り上げた社会派作品です。
最近では,LGBT(レズ,ゲイ,バイセクシュアル,トランスジェンダー)という言葉も浸透してきましたが,「そのようなマイノリティと日常的な関わりはない」「自分とはあまり関係ない」と感じている人が多いのではないでしょうか。
本作品は,性的少数者との関わり方や,身近な人が性的少数者であるとわかった場合に起きる出来事について,真正面から取り上げながら淡々とリアルに考えさせてくれる作品です。
【この映画を観てほしい人】
これまで性的少数者との関わりがあまりなく,どう接したらよいかよくわからない人
【あらすじ,ポイント】
母子家庭で育つ小学5年生の女の子トモは,母が置手紙を残してまたも男を追って出て行ったため,書店で働く叔父のマキオ(桐谷健太)を頼ります。
マキオは,介護士として働くトランスジェンダーの恋人リンコ(生田斗真)と暮らしており,3人の不思議な同棲生活が始まります。
マキオはどうやってリンコと知り合い,受け入れ,付き合うに至ったのか?
リンコはどのような子ども時代を送ってきたのか?親はどのような思いで受け止めてきたのか?
性的少数者やその近親者にとり,現代の日本社会はどのような偏見や生きづらさがあるのか?
母親は,母親である以前に自由に恋をしたい一人の女性でもあり,女性である以前に子どもを慈しむべき一人の人間でもあり,育児とどう向き合うべきか?
子どもにとって,しばしば育児放棄する血のつながった母親と,愛情あふれる血のつながらないトランスジェンダーの養母と,どちらのもとで育つのが幸せなのか?
本作は多くの問いを発しながら,声高に性的少数者の権利を主張するわけでなく,社会の無理解を嘆くわけでもなく,「編む」という行為に仮託して「思い」を昇華させます。
【性的少数者の友人との関わり】
ゲイであるとカミングアウトしている友人がいます。
本人から直接聞いたわけではありませんが,「自他ともに認める」という感じです。
頭脳明晰で仕事ぶりは優秀。性格は穏やかで,人格的にもバランスのとれた友人です。
以前,こんなことがありました。
ある夏の夜,彼と歩いていると,アパートの2階の窓が全開で,若い男性がパンツ一丁で部屋の中を歩いている姿が見えました。胸毛やすね毛が,モサモサ生えていました。
私は「うわっ,へんなもの見せるなよ!」と小声で言いましたが,友人は「ヒューッ!ラッキー!!」とものすごいハイテンションなのです。
私は,「ああ,そういうことか!」と理解しました。
性的少数者のことは頭では理解できても,たとえば同じ男性を好きになるゲイのことを,私は感覚的,生理的に理解できないでいました。
しかし,あのとき,窓越しに見えたのが若い女性だったら,どうだったでしょうか?
きっと私は,「ヒューッ!ラッキー!!」と喜んだに違いありません(笑)
背の高い人が好きな人もいれば,背の小さい人が好きな人もいます。やせ気味がタイプの人もいれば,ぽっちゃり気味がタイプの人もいます。
それと同じように,性的少数者は好きになる対象,好ましく思う対象がマジョリティとは異なる,それだけなんだと納得できた瞬間でした。
ちなみに,性的少数者の割合は,一説では10%弱と言われます。
すると,左利きの人と同じくらいの割合なので,気づいていないだけで,けっこう身近な存在と言えます。
私たちの身の周りにも,おおっぴらにすることができず,苦しい思いをしている人がけっこう存在するかもしれず,それは多様性を尊重する健全な社会とは言えないでしょう。
【まとめ】
もし,わが子が性的少数者の資質を持って生まれてきたら,どうするか?
もし,自分が好きになった人が性的少数者であることがわかったら,どうするか?
もし,自分が性的少数者であることがわかったら,どうするか?
そんなことを真剣に考えさせてくれ,男性として女性として以前に「人」としてどうあるべきかを考えさせてくれる良質な映画です^^