残業について③
昨日は、「なぜ,サラリーパーソンが嫌々ながらも残業するのか?」
以下3つの理由の②について述べました。
①周りがみんな残っていて帰りづらいから
②残業代を稼ぎたいから
③仕事が終わらないから
今日は、「③仕事が終わらないから亅についてです。
仕事が終わらない理由は、「仕事量に対して処理量が追いついていない」ということ。
自分が努力や工夫することで何とかなる「A コントロールできること」と、自分ではどうしようもない「B コントロールできないこと」に分類されます。
【A コントロールできること】
<a 仕事の絶対量を減らす>
「コントロールできること」の例としては、「仕事の絶対量を減らす亅が挙げられます。
1日の仕事を見直してみると、意外と成果につながらない無駄なことをしていないでしょうか?
「パレートの法則亅を聞いたことがあるでしょうか。
成果の80%は20%の努力から生まれており、80%の努力は20%の成果にしかつながっていない、というものです。
たとえば、会社の売上の80%は20%の優秀な営業パーソンがあげていて、80%の営業パーソンは20%の売上しかあげていない、ということです。
つまり、「いかに成果を出すか?」に集中すると、やらなくても特段問題ないことは,けっこうあります。
「その仕事をやらなければ,どのような不都合が起きるか?」「それは達成しなければならない成果に直結する致命的なことか?」
を考え抜き,スクラップあるいはスルーします。
仕事の裁量権がない場合は難しいでしょうが,毎日,毎週,毎月のように継続的に発生する仕事であれば,上司と粘り強く相談して合理化を図るべきでしょう。
<b 仕事の進め方を変える>
仕事の絶対量を減らしたら,次は「仕事の進め方を変える」です。
私のオススメは,「その日のノルマ仕事」「頭を使う仕事」は,脳が冴えている午前中に集中的に終わらせてしまうこと。
逆に言えば,「その日でなくてもよい仕事」「頭を使わない作業」は,お昼以降にボチボチやればよいと思います。
脳は起床以降,膨大な情報を吸収・処理して,どんどん疲労がたまっていきます。
感覚的には,午前中の集中力や処理能力は午後の2~3倍に上ります。
この貴重な時間帯を,無意識的にできる作業や打合せに使わず,「その日のノルマ仕事」「頭を使う仕事」に使う。
午前中は無理でも,午後の早い時間帯までに終えれば,その日の仕事はほぼ終わったようなもので,精神的にも楽です。
【B コントロールできないこと】
「いろいろ工夫してみたが,上司の理解がなく仕事を減らせない!」
「絶対的に人が少なくて,仕事が多すぎる!」
「これ以上,効率化などできない!」
といったことも,多々あります。その場合はどうするか?
私のオススメは「逃げる」です。
<a 中長期的戦略>
具体的には,「他部署への異動」や「転職」といった方法があります。少々時間はかかるかもしれませんが,長時間残業が何年も何十年も続くことを避けるには,極めて有効です。
社内のいろいろな上司を見渡して,
「今の職場は残業が多くて嫌だが,数年後,数十年後には自分もあのような上司になりたい!」
と思う組織であれば,前向きな理由を考え出して,他部署への異動にチャレンジする。
反対に,
「数年後,数十年後,あのような上司になりたくない!」
と思うような組織であれば,転職した方がよいでしょう。
<b 短期的戦略>
より即効性のある残業回避術として,「自分は残業できない状況にある」とPRすることも考えられます。
たとえば,
「最近体調がすぐれない」「夜よく眠れない」「朝起きられない」「疲れが抜けない」「健康診断で引っかかった」「親の介護が発生」「育児負担が大変」「子供が病弱」「子供が不登校」「配偶者が体調不良」「すれ違いが続き離婚の危機」等々,
「残業せず早く帰宅しなければならない,やんごとなき事情」
を,上司に口頭あるいは文書で明確に伝えることです。
嘘はいけませんが,「自分も家族も元気いっぱい!いくらでも残業できます!」という人は少なく,何らかの事情は考えられるのではないでしょうか。
上司としても,心身の健康を崩して休まれたり,辞められたりしては困るので,マネジメント上,あなたの残業を減らす対策を取るはずです。
「そんなことをしたら,同僚に迷惑がかかるのではないか?」と心配するかもしれませんが,そこをマネジメントするのが上司の仕事,腕の見せどころです。
他の社員に過度な負担がかからないよう,仕事量を減らしたり,人を増やしたり,何らかの対策を取るはずです。
アクションを起こさない無為無策な上司・組織であれば,やはり異動,転職した方がいいでしょう。
【まとめ】
これまでは,社員の頑張りでなんとかカバーしてきたものの,あなたが「残業が困難」とメッセージを発することで,はじめて組織が実態を認識し,改善が進むことも十分に考えられます。
だいたい,上司や人事課なんてものは,死人病人が出てはじめて動き出すことがザラです。
全体のバランスを見ながら管理する立場からすると,「1人倒れた」「残業が困難と訴えがあった」という「明らかな事実」がないと,アクションを起こせないのです。
「残業が多くてそろそろ病人が出そうだから,増員してあげようかな?」など,気の利いた先回り対応はできないのです。
電通の高橋まつりさんが自殺されたことは,とても悲しい出来事です。が,その悲劇によってようやく,社会全体が長時間労働に正面から向き合い始めたと感じています。
いいえ,逃げることは恥ではありません。
長時間労働により,心身の健康を損なったり,家族関係が破綻したり,死の直前に「あんなに働くのではなかった」と後悔するのと,どちらが良いでしょうか?
これまで述べてきたような改善手段が有効でなければ,「全力で逃げること」こそが,いま私たちに残されたリーサルウェポン(最終兵器)です。
プライドが高く,どうしても「逃げる」という言葉が嫌な人は,「戦略的撤退」と呼びましょう(笑)
そうして少しずつ、残業しないで成果を出す仲間を増やし、残業しない組織を増やし、残業しないのが当たり前の社会を築いていきたいと思います。将来、長時間労働で苦しむ我が子の顔など、見たくありません。